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On the Scenes 現場を旅する

[第18回] ボルドー、増す中国の存在感

 

中国でワインが大ブームだそうだ。その人気はフランス産、特に本家ボルドーのワインに集中しており、シャトー(醸造元)を訪問するツアーも中国人の間で大盛況だという。


ガロンヌ川に面したボルドー中心部

ボルドーはフランス南西部の主要都市。中心部から北北西に車で30分も走ると、紅葉したブドウ畑が一面に広がる風景となる。高級ワインの一大産地メドック地方だ。


街道沿いに、ガラス張りの巨大な建物がそびえる。26ヘクタールの敷地に広がるレジャー施設「ワイナリー」。1500種を用意したワインショップを備えて2007年にオープンした。


開業当初、訪れる観光客の主流は英国人やドイツ人で、中国人の姿は全くなかったという。少しずつ見られるようになったのが2年ほど前。今は毎週、数人から十数人がやってくる。


「でも、日本人観光客とは随分行動パターンが違いますね」と「ワイナリー」のセバスチャン・ブルギニョン担当部長(40)。


日本人の場合、綿密に組んだスケジュールに沿ってブドウ畑や醸造所を見学し、担当者の解説に熱心に耳を傾ける。中国人団体は多くの場合、ワインショップに直行。ワインをごっそり買っていく。


富裕層の増大を反映してか、買いっぷりも豪快だという。ボルドー第1級の最高峰の銘柄「シャトー・ラフィット・ロートシルト」が一番人気。圧巻だったのは、1本1490ユーロするラフィットを31本(計約480万円)、現金で買った中国人がいたことだ。


「カルチャーショックでした」とブルギニョン部長はため息をつく。「でも、今後もつきあっていく大切なお客さんです」


1980年代、バブル経済を背景に高級ワインを買いあさった日本人の姿を思い出した。日本人のワインに対する態度は今、随分洗練されている。中国でそうなるまでにも、まだまだ時間がかかるのだろう。
中国資本がボルドーのシャトーを買収するケースも増えているという。ボルドーの観光担当者は「すでに12カ所を中国資本が握っている」と話す。


「ワイナリー」の創業者フィリップ・ラウークスさん(58)は、資金づくりのため当時所有していたシャトーの一つを中国資本に売却した一人だ。メドックとはジロンド川を挟んで反対側のラランド・ド・ポムロール村にあるシャトー・ド・ヴィオ。購入希望者を募ったら、名乗りを上げたのが、中国最大の国有食品企業「中糧集団有限公司(COFCO)」だった。3年がかりの交渉の末、800万ユーロ(8億3000万円)で昨年合意した。


ただ、買収後も中国側はワインづくりに全く口出しをせず、残ったフランス人スタッフに任せているという。「純粋な投資先として考えているのかも知れない」とラウークスさん。この点、1983年にサントリーが傾きかけていた名門シャトー・ラグランジュを購入し、資金と人材をつぎ込んで再建させた例とは、対応が異なるようだ。



 

(次ページに続く)



くにすえ・のりと

 

1963年生まれ。

2度のパリ勤務を経て2010年からGLOBE副編集長。

ワイン歴は30年近く、飲んだ量は一人前だが……。


 

 

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