一食一会

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[第1回]チャトラパティ・シバージー・ターミナス駅(インド・ムンバイ) 

歴史を象徴する「街の鼓動」

GLOBE記者 江渕崇

Chhatrapati Shivaji Terminus
photo:Ebuchi Takashi

泣き叫ぶ赤ん坊や、辺り構わず口論する男たちを乗せ、その古びた列車はなんの前触れもなく動き出した。午後3時38分、定刻通りチャトラパティ・シバージー・ターミナス(CST)駅を発ったインド中央鉄道「T83」号は、そこから1時間かけて34キロ北東のターネー駅をめざす。


車両のドアは走行中も開けっ放しで、街の空気が遠慮なしに車内に入り込んでくる。周りの乗客の香水のにおいが薄まってほっとしたのもつかの間。香辛料の香りが漂ったかと思うと、突然、腐りかけた魚介類のような悪臭が襲い、次はトイレの芳香剤のような刺激が鼻をつく。


1853年4月16日。蒸気機関車に引かれた14両編成の列車が、まったく同じ区間を駆け抜けた。出発もほぼ同じ午後3時35分。インドの鉄道に詳しい著述家のラジェンドラ・アクレカー(42)によると、これがアジア初の鉄道開業だった。「T83は、歴史を今にとどめる特別な列車なのです」



鉄道が育んだ一体性


英東インド会社の支配下、港町ボンベイは世界への玄関口だった。英国はここを起点に急速に鉄道網を整えていく。綿花などの大量輸送ができるようにし、また、反乱を抑える軍隊を素早く展開するためだ。アクレカーは「鉄道網によって、文化的に多様だったインドに一体性が育まれていった面もある」と言う。


いまCSTには1日に1200以上の列車が発着する。数十秒ごとに到着する列車からは、まだ動いているのに乗客が次々と飛び降り、両側のホームはたちまち人で埋まる。

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