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駅・Terminal

[第3回]ストックホルム地下鉄(スウェーデン・ストックホルム)

世界で最も長い「美術館」

経済部記者 和気真也



最初にアートな駅になったテーセントラーレン。
Photo: Wake Shinya


長いエスカレーターを降りた先には、巨大な洞窟があった。天井や壁面が緑色や茶色に塗られ、古代ローマ時代の遺跡を思わせる彫刻アートが置かれている。なんだかテーマパークみたいだ。気分を弾ませて通路を進むと、明るく開けた空間に列車が滑り込んできた。


ここはスウェーデンの首都ストックホルムにある地下鉄の「クングストレードゴーデン」駅だ。駅名は、現在は公園として地上に広がる旧王宮の庭にちなみ、王族や貴族の生活文化をテーマにしたアートで彩られている。この都市にあるアートな駅はこれだけではない。


ストックホルムの地下鉄は、約110キロの沿線上に100ある駅のうち、94駅にアートが施されている。あだ名は「世界で最も長い美術館」だ。


最近始めたのかと思いきや、「地下鉄が開通した1950年代から続く取り組みですよ」と、運営会社「SL」の公認ガイド、マリー・アンダーソンさんが教えてくれた。


SLの資料によると最初に駅にアートが施されたのは地下鉄開通の7年後の57年、中央駅の「テーセントラーレン」だった。青く塗られた壁や天井に、駅の建設作業の様子を伝えるデザイン画や、通勤客に癒やしを与える葉っぱの模様などが描かれた。


「駅にアートを」と声を上げたのは地元の2人のアーティスト。市民が呼応し、市議会の議論を経て実現に移された。「アートを、一部のお金持ちや美術館だけのものにせず、みんなで親しもうという文化がこの国にはあるからです」とアンダーソンさんは言う。


アートの形は多彩だ。壁に絵やデザイン画が描かれた駅があれば、彫刻や模型が飾られる駅もある。子どもの絵を壁一面にプリントしたかわいらしい駅も。



日本人彫刻家の作品も


そもそも、洞窟状の駅が多いのも独特だ。掘った岩盤の素材感を生かし、薄くコンクリートを吹き付けた上に色を塗っているという。列車から赤や黄色の洞窟駅に降り立つと、別の惑星に迷い込んだ気分に浸れる。


ソールナ・ストランド駅
Photo: Wake Shinya

アーティストは広く公募したり、市の委員会が選定したり。「日本人が手がけた駅もありますよ」とアンダーソンさん。「ソールナ・ストランド」へ行くと、青空を表現した立方体の彫刻が駅の天井やプラットホームに埋め込まれていた。彫刻家の楢葉雍(ならは・たかし)さんの作品だ。


取材のため写真を撮っていると、「お気に入りの駅を見つけた?」と声をかけられた。ダニエル・フォルナリクさん(36)は、ノルウェーのオスロから休日を使って訪れ、「駅の美術館巡り中」だという。「歴史が描かれたこの駅が好きだけど、どれもおもしろいよね」と、路線図を指さしながら楽しそう。地下鉄アートは旅人たちの交流にも、一役買っている。


駅の数は2020年までにあと6駅増える予定だ。どんなアートな駅にするか、市の委員会で議論が進んでいる。




和気真也(わけ・しんや)

1979年生まれ。GLOBE編集部などを経て経済部記者。写真が苦手な私でも美しく撮れる、フォトジェニックな駅たちに感動した。




(次ページへ続く)

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