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世界のスポーツ

[第83回]ITが広げる観戦の楽しみ





IT技術を使い、「スポーツの楽しみ方を広げよう」という取り組みが進む。手元のスマートフォンで見逃した技を再生したり、試合中、席に食事を配達してもらったり。4年後の東京五輪は、最新技術の見本市にもなりそうだ。(スポーツ部・野村周平)




2月にフランスで開催された柔道の国際大会「グランドスラム・パリ」。選手の登録人口が約60万を誇る柔道大国だけに、アリーナは活気に満ちていた。その中で、1組のカップルがスマートフォンを片手に戦いを見つめていた。


大会は四つの畳で同時に試合が進行していた。2人から最も離れた第4試合場付近で歓声が起きたが、様子がよく分からない。そこで、ジャニック・ビュイソンがスマホ画面の「4」を押すと、第4試合場の中継映像が映し出された。巻き戻し機能とスローモーション機能を使うと、勝者が投げ技で崩し、寝技で抑え込む過程がはっきりと確認できた。仏西部アンジェの道場で柔道を教えるビュイソンは「この機能はすごい。いろいろな試合を見られるんだから。おかげで彼女に詳しく技を解説できるよ」とほほ笑んだ。


五輪機に進出狙う

Photo: Nomura Shuhei

2人が使うのは、仏のソフト開発会社が作った「VOGO Sport」というアプリだ。会場の無料Wi-Fiにつなげば、各試合場の様子が瞬時に見られる。「会場で決定的瞬間を見逃した観客の悔しさを解消する」ため生まれた。2014年から柔道、ラグビー、スキー、カーレースなど様々なスポーツに導入され、カナダでも使われている。


映像は、審判が確認用に使うものや、テレビ配信用のものを流用するため、運営側の費用負担は無料Wi-Fiの設置費ぐらいだ。利用者はアプリを無料でダウンロードできる。PR不足で認知度はまだ低いが、観客だけでなく、試合場から離れた場所で準備運動する選手や、原稿を書きながら試合をチェックするジャーナリストにも利用者がいた。実際に記者も試してみた。試合を巻き戻し再生できる機能は便利だが、スマホばかりを見てしまい、画面に映らない選手の表情やしぐさを見逃すデメリットも感じた。


VOGOの導入を決めた仏柔道連盟ゼネラルマネジャーのエリック・ヴィランは「柔道は判定が難しい。スロー再生機能などを使えば、柔道が美しいスポーツであることを、より分かりやすく示すことができる」と話す。観客が入れない練習場などにカメラをつけて、独自の映像を配信する仕掛けも考案中という。「今後は利用者に年齢、性別、好きな選手などを入力してもらい、その人にあった情報を提供することも可能になる。応援する選手に投票して、ゲームのように試合を楽しんでもらう方法も考えている」


世界展開を目指すVOGOにとって、19年にラグビーワールドカップ、20年に東京五輪・パラリンピックを開催する日本は魅力的な市場だ。昨年12月には東京・秩父宮ラグビー場であったラグビーの試合に各競技団体の担当者を呼び、アプリの体験会を開いた。様々な角度から試合を楽しめる映像の評判は上々だったという。


日本ラグビー協会トップリーグ委員長の太田治は「非常に面白いシステムだと思う。ネックはWi-Fiの設置費用などに約400万円がかかることだが、このサービス用のスポンサーがつけば、すぐにでも実施したい」と前向きに話す。




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