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世界のスポーツ

[第50回]伝統の指相撲で流血も

ドイツで人気の真剣勝負





フィンガー・ハーケルンの真剣勝負では、指を傷つけ流血してしまうこともある。
photo:Franz Freisl, Tamakawa Toru
(朝日コネクトで動画をご覧になれます)



今夏、サッカーW杯ブラジル大会で優勝したドイツ。巧みな足技でならすこの国の人々は、風変わりなスポーツの大会を続けてきた。「指相撲」。国際大会もある。指の腱(けん)がちぎれかねない真剣勝負だ。(ベルリン支局・玉川透)




木製の小さなテーブルを挟んで座った2人の男。大観衆を前に、互いの中指を輪に絡めると、必死の形相で体をのけぞらせる。今にも指が引きちぎれると思った瞬間、はじけたように1人の体が相手側に引き寄せられた。


今年8月、ドイツ南部ガルミッシュ・パルテンキルヒェンで開かれた、「フィンガー・ハーケルン」と呼ばれる指相撲のドイツ選手権大会の一コマだ。指相撲とばかにするなかれ。今年で55回目を誇る伝統あるスポーツなのだ。


ルールはいたって簡単。2人の選手が約75センチ幅のテーブルを挟んで腰掛け、直径10センチほどの革バンドに指1本を通す。力を入れるために片足をテーブルの縁に添え、あとは審判のかけ声と同時に、力の限り引きあうだけ。相手を自陣のテーブルの縁まで引き込んだら勝ちだ。日本でよく知られる指相撲というよりは、「綱引き」に近い。


ドイツ選手権大会といっても、選手のほとんどはドイツ南部バイエルン地方の出身だ。今大会には約160人が参加し、年齢や体重別で14階級に分かれて熱戦を繰り広げた。たいがい3秒ほどで決着がつくが、1分を超える熱戦もたまにあるという。


シニアの部(55歳以上)で優勝したフランツ・フライズル(60)は、過去8回もチャンピオンに輝いた実力者。本職は機械技師だ。16歳から本格的に練習し、現在は独フィンガー・ハーケルン協会の支部長も務める。


フライズルによると、勝敗を分ける要因は、指の力6割、他の体の力3割、精神力1割。審判の合図にすばやく反応する集中力も重要だ。日本の相撲の「たちあい」に通ずるものがある。


フライズルが強敵と1分を超える熱戦を演じたときのことだ。限界に近づいたとき、敵の目を見据えてにっこりした瞬間、相手がギブアップしたという。「指や腕の力だけではない。相手の力量や戦い方のくせを見極め、心理戦による駆け引きも勝敗を左右する」。なかなかに奥が深いスポーツのようだ。



フィンガー・ハーケルンの選手権

photo:Tamakawa Toru
シニアの部で優勝した、フランツ・フライズルさん。

1953年に独バイエルン選手権、59年にドイツ選手権が開催された。ドイツとオーストリアの両協会があり、現在会員は計約3500人を数える。実際に競技の練習をし、大きな大会に出場しているコアな選手は500人程度という。


公式ルールでは、親指以外ならどの指を使っても良いが、最も力が入る中指を使う人が多い。公式戦では、先に2勝すれば勝ち。選手が勢い余って頭を床に打ちつけないようにチームメートが後ろに控える。


かつて、互いの指をじかに絡めていたが、指にひねりが加わって骨折する人が続出した。そのため、ハンカチや革バンドを使う今のスタイルに落ち着いたという。




たまかわ・とおる

1971年生まれ。ウィーン支局長などを経て現職。高校時代に柔道部で鍛えた筋肉はぜい肉に。妻に厳命され必死でダイエット中。



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