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マイケル・ブース氏、食は「あらゆることを教えてくれるユニバーサルな言語」

「dancyu」植野広生編集長と対談

GLOBE×KADOKAWA トークイベント「日本人が知らない日本食の世界」

食について議論する植野広生編集長(右)とマイケル・ブース氏(左)=6日夜、東京都港区、大室一也撮影

GLOBEの人気コラム「マイケル・ブースの世界を食べる」の筆者ブース氏と食雑誌「dancyu」の植野広生編集長が、「日本人も知らない日本食の世界」をテーマに語り合う合うイベントが4月6日夜、東京都港区の六本木ヒルズであった。ブース氏は、食べることとは、その国の文化について知る必要がある「あらゆることを教えてくれるユニバーサルな言語」と話した。 (GLOBE編集部 大室一也)



このイベントは、GLOBEと、3月末にブース氏の新著「英国一家、日本をおかわり」を出版したKADOKAWAの共催で、アカデミーヒルズライブラリーが協力。GLOBE読者ら約150人が参加し、後藤絵里・朝日新聞バーティカルメディア統括編集長がモデレーターを務めた。


ウミブドウ、泡盛、しっぽく料理、昆虫のつくだ煮、フナずし、シジミ、こうじ、メロン……。初めにブース氏は沖縄から北海道まで、昨年、取材旅行で食べた日本各地の食材をスクリーンに映しながら紹介。特に北海道のウニの場面で「大学入学、結婚、子どもが生まれたが、この日が人生最良の日だった」と話し、会場の笑いを誘った。


植野氏は、明治時代に日本を旅して紀行文を残した英国人女性イザベラ・バードを引き合いに出し、日本人が普段気がつかないことを独自の視点で記しており、「多分100年後に読んだら、日本の食ってこうだったんだなというのがすごく分かるような面白さがある」と、ブース氏を現代のバードと評した。

マイケル・ブース(Michael Booth)。英国・サセックス生まれ。食と旅が専門のジャーナリスト。著書に、『英国一家、フランスを食べる』(飛鳥新社)、『英国一家、インドで危機一髪』(KADOKAWA)など。著書『英国一家、日本を食べる』(書籍、コミックとも亜紀書房)をもとにしたアニメシリーズが2015年、NHKで放送された。妻リスン、息子アスガーとエミルと共にデンマーク在住。

現在、ブース氏はデンマークに在住している。約20年前に初めて同国を訪れた際、おいしかったのは「質の良いレストランはとても高くて、古めかしいフランス料理店だった。食材はフランスやイタリアから輸入されていた」とふり返った。今はスカンディナビアにも素晴らしい食材があると認識され始め、料理人たちが発酵させたり、乾燥して保存食にしたり、ピクルスにしたり、昔ながらの方法で調理。スーパーでも質の高い、有機の野菜や果物が手に入るようになったとした。


2013年、「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本では日本食への関心が高まったものの、ブース氏は日本に与えたほどのインパクトは世界的にはなかったとの見方を示した。一方、食のグローバル化のなか、琵琶湖畔で特産のフナずしを作っている若い生産者のように、日本では「若い人たちが伝統的な日本食へ関心を持っており、何度も励まされた」と語った。


新著について植野氏は「すごいなと思うくらい生産者のところに行き、実際に食べ、話を聞き、文化を調べ、これは嫌い、好きと明確にしている。そこが一番すごい」と指摘。ブース氏は嫌いな物も挙げた理由について、「日本を旅してすべての食をおいしい、素晴らしいと書いたら、つまらない本になる。だれも私の言葉を信じてくれない」と説明した。

植野広生(うえの・こうせい)。1962年生まれ、栃木県出身。法政大学法学部に入学。上京後すぐに、銀座のグランドキャバレー「モンテカルロ」で黒服のアルバイトを始める。その後、鰻屋や珈琲屋など多数の飲食店などでアルバイトを経験。卒業後は新聞記者や、経済誌の編集担当などを経て、2001年「dancyu」を発行するプレジデント社に入社、2017年4月に編集長に就任。趣味は料理と音楽。いまも「大きくなったらナニになろうかな」と真剣に考えている55歳。

話題は日本の調理人の職人気質にも及んだ。有名になるためでも、金持ちになるためでもなく、客を喜ばせるためだけに一生懸命働く調理人たち。「こうした人たちについて話し始めると、いつも感激する」とブース氏。一方、米国の場合、調理人はテレビに出たり、本を出したりすることに目が行き、名声を追い求めてしまう傾向にあると語った。


訪日外国人が増加するなか、日本では日本語が話せない外国人の来店を断る飲食店がある。ブース氏は、例えばスペインではスペイン語を話せなくても断られることはないなどとして、「なぜ世界最高のサービスを提供する国で、こういったことがあるのか不思議」と述べ、空席があるにもかかわらず、最初は入店を断られた北海道函館市のすし屋での体験を披露した。

食について議論するマイケル・ブース氏(左から2人目)と植野広生編集長(右端)、モデレーターの後藤絵里・朝日新聞バーティカルメディア統括編集長(左端)=6日夜、東京都港区、大室一也撮影

最後に食べることとは何かを問われ、ブース氏は「食はその国の文化、その国、国民を理解する一番早いルート」であり、食を通じてあらゆることを学ぶことができるとした上で、その国の文化について知る必要がある「あらゆることを教えてくれるユニバーサルな言語」と表現した。その上で、こう付け加えた。「実はすごい食いしん坊なだけなんです!」


※当日の様子を動画でもどうぞ。




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「マイケル・ブースの世界を食べる」の筆者ブース氏のトークイベントを動画でどうぞ

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