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「ネオナチだって、変われる」~『女は二度決断する』


今作に登場する若いネオナチ夫婦は、非常に不敵な笑みを浮かべていた。この描写もアキン監督のリサーチに基づくだけに、よりリアルに感じた。そんな彼らも、変わりうるのだろうか。そう聞くと、「その通り」とアキン監督は即答した。

ファティ・アキン監督=仙波理撮影

アキン監督は「暴力がいかに次の暴力を生み出し、ヘイトがいかに次のヘイトをもたらすか。今作は、そうした連鎖についての物語だ 」とも語った。「変わりうる」と信じるか、「目には目を」と復讐に突き進むか。この映画は私たちに、そう問いかけているということだ。


ドイツでは反難民・反イスラムを掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が右翼政党として戦後初めて国政に進出、第3党に躍り出ている。アキン監督は言う。「攻撃したがる彼らを憎み返すのは簡単だが、それでは問題解決にならない。対話こそ望ましい道だ。というのも、AfDに投票した人の多くは、心底からの人種差別主義者ではない。彼らは経済的な問題を不安視し、グローバル化によってアイデンティティーを失うのではないかと恐れている。そうした不安や恐れを抱く人々を、人種差別主義者が代弁する形となっている」

『女は二度決断する』より © 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production,corazon international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment
GmbH

アキン監督はそのうえで、「リベラルエリート」に批判の矛先を向けた。「本来、リベラルエリートこそ彼らの声とならなければならないのに、どうすれば経済を成長させられるか、そのために何ができるかばかり考えて、路上の人々との対話をおろそかにしてしまっている。米国でもこのせいで、クリントンが敗れてトランプが大統領になる『トランプ症候群』が生まれた」


今作は欧米で高い評価を受けただけでなく、興行的にも成功した。だが、「メディアは、熱狂的に迎えたところもあれば、批判的な報道もあり、半々に分かれた。人種差別的なメディアもいるからね」とアキン監督。影響力を考えると、人種差別的なメディアなんて考えるだけでぞっとするが、日本でも確かに増えている。

来日記者会見に臨むファティ・アキン監督(左端)と主演ダイアン・クルーガー(中央)、友人で弁護士役のデニス・モシット(右端)=藤えりか撮影

アキン監督は若い頃は俳優をめざしていたが、ステレオタイプに満ちた役柄ばかり回ってくるトルコ系の状況に嫌気がさし、作る側へと進路変更した経緯がある。トルコ系の配役をめぐる状況は、その後変わったのだろうか。「今は政治家もキャスターも、ドイツ代表のサッカー選手にもトルコ系がいるし、映画監督や俳優も増えて、20〜30年前に比べれば良くなった。でも、それでもメディアにはまだある種のステレオタイプがある。ドイツの映画賞で、トルコ系のノミネートはわずかだ。ハリウッドも同じようなものだけれど、(『ゲット・アウト』の)ジョーダン・ピール監督が台頭したり、いくらか進んではいるよね」


「アーティストには、大事な問題を世に示すチャンスがある。残念ながら映画そのものが問題を解決するわけではないけれど、観客に考え議論してもらうきっかけになる。そうして物事は変わりうる。映画はその手助けをするということだ」とアキン監督。日本でもヘイトはなお深刻な問題だ。監督の言う「何事も変わりうる」が今作によって少しでも実現すれば、と心から願う。

筆者のインタビューに答えるファティ・アキン監督=仙波理撮影



藤えりか(とう・えりか)

朝日新聞(be編集部 兼 GLOBE編集部)

1970年生まれ。経済部や国際報道部などを経て2011~14年にロサンゼルス支局長、ラテンアメリカを含む大統領選から事件にIT、映画界まで取材。映画好きが高じて脚本を学んだことも。著書に『なぜメリル・ストリープはトランプに嚙みつき、オリバー・ストーンは期待するのか~ハリウッドからアメリカが見える』(幻冬舎新書)。読者と語るシネマニア・サロンを主宰。ツイッターは@erika_asahi






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