RSS

Webオリジナル

移民に対して帰化を進めるべきなのか

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (4)

木村草太教授、ホリフィールド教授に迫る

10月1日から3日にかけて東京で開かれた「朝日地球会議2017」(朝日新聞社主催)のうち、GLOBEが企画したオープニングセッションのシンポジウム「壁が世界を分断する?」の論議を5回に分けて紹介しています。今回はそのうちの第4回。首都大学東京の木村草太教授が、米サザンメソジスト大学ホリフィールド教授に質問を投げかけます。コーディネーターはGLOBE編集長の国末憲人です。

ホリフィールド教授(左)と木村草太教授

国末:では、木村先生からホリフィールド先生にご質問がありますか。


木村教授:はい。先ほどの話をうかがって、また先生が編集にかかわられた本を読んでいて分かったことは、移民の制限をしようとしても、経済的な取引や人の移動のなかで押しとどめるのはとても難しい、ということです。むしろ、移民はたくさん入ってくるし、人の移住はたくさん起こることだ、ということを前提に政策をつくらないといけない。それはよくわかるのですが、そういう政策をつくる時に、二つの方向があると思います。国籍の取得、日本では帰化と言いますが、これを推進した方がいいのか。それとも外国籍のまま強い資格で滞在できるようにするとした方がいいのか。このあたりの制度のあり方についてビジョンをお聞かせいただきたいと思います。

 

ホリフィールド教授:木村先生、質問ありがとうございます。なかなか深い問いかけだと思います。少し立ち返って、いまの木村先生のプレゼンテーションに触れたいと思います。


国際法に基づいて、各国家は確かに、誰を入国させるか否か、誰がそこで移住すべきか否かを決める権限を持っています。在留を認めるかどうかも、各国が持つ国際法に基づく権利であることは確かです。しかし、こうした主権があるからといって、いかに各国がオープン性をマネージするかまでは、うたっていないわけです。国によって、より開放的な施策をとる場合、これは経済的あるいは人道的、政治的な要因が働いて、そうなる場合も想定できるかと思います。つまり、各国間の実践面で相当なばらつきがあると思います。


外国人に与える権利とは?


そして、まさにおっしゃる通りだと思うのは、権利というものがまず憲法ありきだということです。各国でも日本でもそうです。日本がどこまで外国人に権利を付与するかは、日本の判断次第ということです。ただ、そうは言いつつも、地理的あるいは経済的な、様々な要因があって、人々の移住は避けられない。しかも昨今、移動が加速している。危機とは言えないかもしれませんが、確かに数は増えています。


さきほどの質問に戻りますけど、自由主義国家あるいはリベラル国家は、この地域では魅力があります。そこに一歩足を踏み入れることができれば、自ずと権利がついてくるからです。そして、日本はそのリベラル民主国家であると、私は考えています。もちろん、マクリーン判決のような話はあるわけですが。


ここで、権利を四つに分けて考えてみたいと思います。


まず、基本的な公民権ですね。つまり、国家の任意的な、様々な介入から身を守るための公民権です。もちろん、裁判の仕組みもありますので、不必要に国外退去になることも防ぐことができます。


二つ目は政治的な権利です。一個人が社会の一員として迎えられた場合に、投票権はどうなるのか、国籍はどうなるのか、という課題です。どのようなタイミングで、どういった条件を満たせば、その社会の一員になって国籍を取得できるのか。もちろんそれを制御するルールがあり、日本の場合、アメリカやカナダ、ヨーロッパ諸国とはだいぶ様相が違います。そしてこれこそが日本の主権です。


三つ目は、福祉あるいは社会保障の権利です。日本やアメリカのような民主国家に該当すれば、医療や学校の義務教育といった重要な権利を持つことができる。こういった議論も、いままでさんざん行われてきたと思います。


そして四つ目、これが人道的な権利です。1948年の世界人権宣言以降、多くの国が賛同し、人権を守ることを宣言してきました。この中には、例えば、庇護(ひご)を受ける権利です。迫害されている母国から別の国に移住をした場合、受け入れ側が断る権利はあっても、本国に送還することは禁止されています。


外国人が入国し、日本で仕事をし、家族を育てるとなると、その社会のなかで定住する権利を持つべきです。誰かを受け入れる、たとえゲストワーカーとして迎え入れたとして、彼らに対して権利の手を差し伸べず、つまり市民権や国籍取得の権利を阻害するなら、それは社会的な規約に抵触することになります。つまり、ある程度の法制が必要であり、定住権を与えたり、帰化に向けて何かしらの政策を進めたり、といった対応が必要であると思います。道徳的なことといってもいいかもしれません。


問題は、どのタイミングなのかというところです。国によってばらつきはあると思います。3年かかる国、10年かかる国があるでしょう。しかし、プレゼンテーションでも主張しましたが、こういった権利を拒否し、彼らを正当な移民として迎え入れないと、結果的にマイナスとなり、社会に不安定をもたらすものとなります。米国で、たくさん移住者が来て不法滞在しつつ働いているのが、この状態です。


米国で生まれたら自動的に市民権を得られる、という仕組みの方が、私はよいと思っています。その国で生まれたことによって、おのずと市民権を得られる。ドイツの場合、かなり長く申請を続けてそういった権利を得るという状況でした。ただ、1999年に方針を政治的意図的に変えました。帰化の条件、市民権の条件が、だいぶ緩和されました。結果的に、それがドイツの社会情勢の安定化につながった、と私は思っています。


木村教授:明確なお答えをありがとうございました。


国末:ありがとうございます。


「『壁』のない世界は実現できるのか」に続く)


【関連記事】

日本人が知らない移民政策の秘策とは (1)

「壁」にはどこかに抜け道がある(画像で紹介)(2)

国境は人権保障の手段なのだ 木村草太教授が登場 (3)

壁はなぜ生まれるのか 人の移動研究の草分け、ホリフィールド教授語る

特集「壁がつくる世界」

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

Back number | バックナンバー

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (5) 「壁」のない世界は実現できるのか

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (5)
「壁」のない世界は実現できるのか

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (4) 移民に対して帰化を進めるべきなのか

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (4)
移民に対して帰化を進めるべきなのか

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (3) 国境は人権保障の手段なのだ 木村草太教授が登場

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (3)
国境は人権保障の手段なのだ 木村草太教授が登場

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (2) 「壁」にはどこかに抜け道がある(画像で紹介)

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (2)
「壁」にはどこかに抜け道がある(画像で紹介)

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (1) 日本人が知らない移民政策の秘策とは

GLOBEシンポ「壁が世界を分断する?」をがっつり伝える (1)
日本人が知らない移民政策の秘策とは

ホリフィールド教授語る(下) 壁のない世界は可能か

ホリフィールド教授語る(下)
壁のない世界は可能か

Popular article | 人気記事

さらに記事を見る
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示