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【創刊からの9年】Ⅱ ライフネット生命創業者・出口治明「世界はそんなに変わっていない」


GLOBEは創刊前、さまざまな分野の専門家ら約50人にどんなメディアを目指すべきかを聞いていた。「長期取材による深いルポ」「物事の単純化を避ける」――。掲げた理念は今、どういかされているのか。今後は何が求められるのか。当時、話を聞いた人たちのうち、ライフネット生命創業者の出口治明さんにインタビューした。


――GLOBEが2008年に創刊した直後、米国ではオバマ政権が誕生し、世界は高揚感に包まれていました。あれから9年、オバマ政権からトランプ政権へ代わり、世界各地で「分断」が進んでいるように見えます。


2008年と2017年の今。世界はそんなに変わっていません。

歴史には気候変動のような「長い波」、ハプスブルク家とフランス王家の対立の歴史のような「中期の波」、そして個人の登場人物たちの「短い波」がある。


人はついつい「短い波」にとらわれ、「オバマがどうした」「トランプがどうした」などと考えがちですが、世界はジグザグしながらも大きな流れで見たら良い方向に進んでいると思います。


――とはいえ、グローバル化で格差が進み、世の中は良くない方向に進んでいると感じる人も多いでしょう。


1日1・25ドル未満で生活する極度の貧困層は1990年の19・26億人から2015年には8・36億人と、半分以下に減りました。5歳未満児の死亡率は出生1000人当たり90人(90年)から43人(15年)に下がり、若者の識字率は83%(90年)から91%(15年)へ上昇しています。


メディアは、何よりもファクトが大切。事件に大騒ぎするのではなく全体を見る。トランプ大統領のような、物事を針小棒大にとらえる指導者が出てきている時こそ、メディアの役割は大きいのです。


――インターネット全盛期となり、新聞やテレビへの不信感が広がっています。メディアが役割を果たすために必要なことはなんでしょうか。


大切なのは、エピソードではなくてエビデンス(証拠)です。


この世の中にはひどいことや、許せないことが確かにある。でも、人間社会はきれいごとだけではすまない。エピソードで心をわしづかみにするのはいい。


でもエビデンスで裏付けなければ単なるアジテーション(扇動)に堕してしまう。タテの「歴史的視点」、ヨコの「国際的視点」、そして、「数字」でもって物事の本質を構造的にえぐってほしい。


――GLOBEに注文することはありますか。


GLOBEの創刊時に、大きなテーマを深掘りして、意味を問う試みとして期待しました。「タテ」「ヨコ」では頑張っていると思うが、まだ足りないのは「数字」です。


例えば、パレスチナの女生徒が小学校に行く。壁がなければ15分で通学できるが、壁のせいでう回して遠回りせざるをえず、1時間かかる。そういう数字を積み重ねて立体的に示してほしい。エピソードとエビデンスの組み合わせが大事です。


新聞は速報性ではツイッターなどに勝てません。では、どこにバリューがあるのか。原稿を直すデスクや、見出しを付ける編集者がいることです。こうした手順を全部カットするとインターネットと同じようになってしまう。つまり、メディアとしての存在価値はなくなる。世界で起きた出来事をどう位置づけるかという文脈でしか新聞は勝負できない。


新聞の強みをいかして付加価値を作ることができないのなら滅ぶしかない。GLOBEは徹底して文脈にこだわるしかない。そう思い切れば、なんでもできるでしょう。(聞き手・鮫島浩)



出口治明(でぐち・はるあき)

 日本生命で経営企画を

担当した後、ライフネット生命を創業。『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)など歴史に関する著書が多数ある。


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