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格差の壁、打ち破るには? 踊りましょう~『ポリーナ、私を踊る』

東京でインタビューに答える、『ポリーナ、私を踊る』のヴァレリー・ミュラー監督(右)とアンジュラン・プレルジョカージュ監督=仙波理撮影


シネマニア・リポート Cinemania Report [#70] 藤えりか


格差が広がり、「アメリカンドリーム」的な一発逆転も今や想像しづらくなってきたこの頃。格差の壁を打ち破る道、どんなところにあるのだろうか。28日公開のフランス映画『ポリーナ、私を踊る』(原題: Polina, danser sa vie)(2016年)を共同監督したヴァレリー・ミュラーとアンジュラン・プレルジョカージュ(60)にインタビューし、ひとつのヒントが見えてきた。

『ポリーナ、私を踊る』より、ポリーナ役のアナスタシア・シェフツォワ © 2016 Everybody on Deck - TF1 Droits Audiovisuels - UCG Images - France 2 Cinema

今作は、ロシアの貧しい家庭に育ったポリーナ(アナスタシア・シェフツォワ、22)が主役。家計が火の車の両親は、4歳からバレエに打ち込むポリーナのボリショイ・バレエ団入りに期待をかける。ポリーナは無事、ボリショイのオーディションに受かるが、ある日コンテンポラリーダンスと出あって目覚め、両親の反対を押し切ってボリショイ入りの栄誉を捨て、ダンサー仲間の恋人アドリアン(ニールス・シュナイダー、30)と南仏エクス・アン・プロヴァンスへ向かう。著名な振付家リリア・エルサジ(ジュリエット・ビノシュ、53)のもとでコンテンポラリー・ダンスを学ぶが、気持ちばかりが先走り、リリアに突き放される。アドリアンとも別れ、いよいよひとり、コンテンポラリー・ダンスの盛んなベルギー・アントワープへ。仕事探しもオーディションもうまくいかずゆきづまるが、子どもたちにダンスを教える舞踊家カール(ジェレミー・ベランガール、42)に刺激を受け、本当にやりたいことを見つけてゆく。


ダンスと聞くと、自分からは遠い世界と思う人も多いかもしれない。でもポリーナが迷いながら進む姿は、格差を乗り越えて社会階層を駆け上がろうとする若い女性の軌跡だ。

ヴァレリー・ミュラー監督(右)とアンジュラン・プレルジョカージュ監督=仙波理撮影

ミュラー監督は「ダンスの世界には実際、貧しい境遇から有名になった人たちがいる」と言って、ドイツの伝説的な振付家、故ピナ・バウシュや、旧ソ連からフランスに亡命し、『愛と哀しみのボレロ』(1981年)でも描かれたスターダンサー、故ルドルフ・ヌレエフの名を挙げた。「お金がなくても、体があればダンスはできる。身体表現を通じて成功し有名になる、という現実を今作で示している」


ピナ・バウシュは実家が営むレストランで客にダンスを披露して頭角を現した。ポリーナの場合、バレエ学校に通いながら自主練習した場所は、一家が住む狭い団地の前の野外。一帯にエネルギーを供給する地熱センターが目の前にあり、決して最適な環境とは言えないうえ、冬は雪に覆われ、極寒だが、厳しい師の教えのもと、ボリショイのオーディションに受かるまでになった。


プレルジョカージュ監督はコンテンポラリー・ダンスの世界的な振付家。両親は旧ユーゴスラビア(現モンテネグロ)からフランスに亡命したアルバニア系だ。そうしたバックグラウンドは、今回の映画づくりに影響しただろうか。そう聞くと、プレルジョカージュ監督は「影響はあった。脚本を書いたヴァレリー(・ミュラー)と話しながら、そこは少し入れた。芸術作品はすべて、個人的なことを語ることで普遍的になると思う」と答えた。

『ポリーナ、私を踊る』より © 2016 Everybody on Deck - TF1 Droits Audiovisuels - UCG Images - France 2 Cinema

ミュラー監督が言葉を継いだ。「アンジュランの場合は両親の世代だったが、他の国への移民となり、活躍の場を求めたのはポリーナと重なる。基礎は古典で培いながら、リスクを負いつつもすべてを捨ててコンテンポラリーの世界に移ったのもそうですね」



(次ページへ続く)

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