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「男性」?「女性」? ジェンダー超えた俳優~『アンダー・ハー・マウス』

インタビューに答えるエイプリル・マレン監督=外山俊樹撮影


シネマニア・リポート Cinemania Report [#67] 藤えりか


モデルのエリカ・リンダー(27)は「男性」としても「女性」としても人気だ。と聞くと混乱するかもしれないが、まずは「彼女」のビジュアルをご覧あれ。そのエリカが、生物学的には同じ女性ばかりのクルーのもとで初めて主演した、カナダ映画『アンダー・ハー・マウス』(Below Her Mouth)(2016年)が7日公開。エイプリル・マレン監督に、東京でインタビューした。

『アンダー・ハー・マウス』よりエリカ・リンダー © 2016, Serendipity Point Films Inc.

今作でエリカが演じるのは、カナダ・トロントで大工の仕事をするダラス。さまざまな女性と関係を持ちながら自分の居場所を探すうち、ファッション誌エディターのジャスミン(ナタリー・クリル)と出会う。ライル(セバスチャン・ピゴット、34)という婚約者がいるジャスミンは、「女性」であるダラスの熱烈なアプローチに戸惑い突き放すが、次第に惹かれ合う。ライルと結婚して「普通」に暮らす人生か、ダラスとの愛に生きるか、揺れ動く。


エリカはスウェーデン出身の在米モデルで、今作が長編映画デビュー。性別を超えた見た目から、米ファッションデザイナー、トム・フォード(56)のメンズ・コレクションをはじめ、世界の名だたるファッション広告や雑誌、ショーに「男性モデル」として相次ぎ登場して話題となった。若きレオナルド・ディカプリオ(42)との呼び声も高い。

『アンダー・ハー・マウス』よりエリカ・リンダー © 2016, Serendipity Point Films Inc.

エリカは今回、「ダラスを演じられるのは私以外にいない」と自ら売り込み、同性愛者の役をきわめて自然に演じた。それもそのはず。実生活でも同性愛者だと公言。ソーシャルメディア上では「私は想像力が豊かすぎて、ひとつの性にとどまれない(I have too much imagination to be just one gender.)」と発信し、若い世代を中心に熱烈な支持を集めている。同性愛者だとカミングアウトする著名人は世界的にも「男性」が多いだけに、エリカの存在は際立つ。


LGBTの映画はここ数年、世界的に増えたが、シネマニア・リポート[#30]で『タンジェリン』のショーン・ベイカー監督(46)も指摘するように、そうした映画に本物のLGBTの役者をキャスティングする例はまだまだ少ない。

『アンダー・ハー・マウス』よりエリカ・リンダー(右) © 2016, Serendipity Point Films Inc.

マレン監督は言う。「自分のセクシャリティーについて公言する役者が少ない、という背景もある。そもそも彼らがカミングアウトを居心地がいいものと感じているかどうかも、よくわからない。ただ、LGBTではない役者が、こういうものだろうと思って演じるのがいいと思う人も少ないでしょう」


だからこそ今作は、カナダをはじめとするLGBTコミュニティーに大いに支持されたという。

エイプリル・マレン監督=外山俊樹撮影

ただ、いくら役柄と本人に重なる部分があるとしても、これだけ自然に演技できたのには、現場やスタッフの力が大きいようだ。



(次ページへ続く)

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