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北朝鮮は本当に孤立しているのか

アフリカ研究者 白戸圭一 11

日本のメディアだけでは分からない


 アフリカの国々は「制裁破り」に加担してきただけではない。例えば、2014年12月18日に国連で採択された、日本政府とEUが共同提案した北朝鮮の人権侵害を非難する決議を見てみよう。この決議は賛成116、反対20、棄権53、欠席4で採択されたが、加盟各国の投票行動を分析すると、興味深いことが分かる。反対20カ国のうちの3カ国、棄権53カ国のうちの24カ国、欠席4カ国のうち2カ国がアフリカの国だった。つまり、アフリカ54カ国のうち半分以上の29カ国が、北朝鮮を非難すること消極的だった。


 アフリカの国々の中には、ボツワナのように14年2月に北朝鮮と国交断絶した国もある。かつて北朝鮮との間で警察官の訓練に関する契約をしたウガンダも、2016年5月になって北朝鮮との協力関係を停止すると発表している。日本や米国の働きかけにより、アフリカの国々の北朝鮮との関係も徐々に変わりつつある。

 だが、アフリカに限らず、北朝鮮との友好関係を維持してきた国は、中国以外にも世界に数多くあった。17年3月に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害された際、北朝鮮とマレーシアの国民が互いにビザなしで渡航できたという事実を知り、われわれ日本人が考えているほど北朝鮮が国際的に孤立してはいない現実を思い知らされた読者もいたのではないだろうか。


 インターネットが発達した現在、日本にいながら世界各国の新聞を外国語で読み、外国語で書かれた論文やレポートに日常的に目を通している日本人は一定数存在する。

 だが、多くの人は日本語の新聞を読み、日本のテレビ局が放送している日本語のニュースを視聴し、インターネットの世界にあふれる日本語で書かれた情報に目を通し、そこで終わっているだろう。つまり、我々の現代国際情勢に関する認識は、実は日本語媒体への依存という限られた条件下で形成されたものに過ぎない、ということだ。

 残念なことだが、北朝鮮を脅威と感じる日本国民の感覚は、世界の人々にさほど共有されてきたとは言えない。北朝鮮の核ミサイルが日本の安全に対してますます深刻な脅威となっている今、我々は防衛力の強化とともに、北朝鮮の脅威について世界の人々に理解してもらうための努力を払う必要があるだろう。


〈バックナンバー〉

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白戸圭一 01 増え続ける胃袋を満たせ


白戸圭一(しらと・けいいち)

三井物産戦略研究所欧露・中東・アフリカ室長。毎日新聞社でヨハネスブルク、ワシントン両特派員などを歴任。2014年より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任准教授兼任。

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