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エチオピアとケニア GDP逆転で思うこと

アフリカ研究者 白戸圭一 10



エチオピアの「カイゼン」


ところが、エチオピアでは新たに権力の座に就いた与党・エチオピア人民革命民主戦線 (EPRDF)のメレス首相(首相在任1995~2012年)の下で、着々と国づくりが進んだ。それは、南アフリカを除けば地場の製造業がほとんど未発達なアフリカにおいて、製造業中心の経済発展を志向する極めてユニークなものであった。


メレス首相は、第2次大戦後に製造業の成功で経済大国となった日本に強い関心を示した。エチオピアには現在、日本語の「改善」に由来する「エチオピア・カイゼン機構」と称する政府機関が存在する。トヨタ自動車の生産方式に強い関心を示したメレス首相の肝煎りで、製造業の生産効率を上げるために設立された組織だ。


メレス氏は2012年に現職のまま57歳の若さで亡くなったが、エチオピアの製造業はその後も着々と発展している。その象徴が、アフリカでは他に類を見ない外国企業向け工業団地の建設だ。08年に首都アディスアベバの南方で最初の工業団地 が竣工したのを皮切りに、既に三つの工業団地(官営2、民営1)が稼働している。操業の中心はインド、トルコ、中国の企業で、3カ国の企業だけで約1500社以上が投資を認可され、縫製、皮革、自動車組み立て、食品加工などの約500社は既に操業している。


エチオピア政府は今後5年間に工業団地を計12ケ所に増やす計画で、二つは建設中、五つは建設業者が決まり着工待ちだ。最初に完成した工業団地だけで5万人が雇用されており、政府は最終的に200万人を製造業で雇用する構想を描いているという。


移りゆく東アフリカの経済的盟主


製造業の振興に注力してきた結果、エチオピアは04年から11年まで8年連続の2桁成長を達成した。16年の実質GDP成長率は8%。一方のケニア経済も13年以降、5~6%台の安定した成長を続けているが、エチオピアの勢いには及ばない。


この結果、両国のGDP総額(名目値)をドルベースで比較すると、15年にはケニア約636億ドル、エチオピア647億ドルとほぼ肩を並べ、16年にはケニア689億ドル、エチオピア725億ドルと逆転した。


IMFは22年までの両国の実質成長率について、エチオピアは毎年7%台、ケニアは5~6%台と予測しており、両国のGDP規模の差は徐々に拡大する見通しだ。人口をみても、国連推計でケニアが約4850万人(16年)なのに対し、エチオピアは同年に1億人を突破し、アフリカ第2の人口大国になった。経済規模で見る限り、東アフリカの経済的盟主の座は徐々にケニアからエチオピアに移っていくだろう。


だが、GDP規模が巨大になり、街に高層ビルが林立し、高級車が走り回っていれば、それでよいのか、と筆者は思う。

 エチオピアで15年5月に行われた総選挙(人民代表議会選)では、1991年から政権の座にある与党EPRDFが定数547のうち500を獲得した。政権は選挙前に独立系のメディアを激しく弾圧し、野党関係者の逮捕も相次いだことから米国や欧州連合(EU)は選挙監視団を派遣しようとしたが、エチオピア政府は米欧の監視団を一切受け入れなかった。これらの「状況証拠」からして、公正な選挙が行われたとは到底思えない。



(次ページへ続く)

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