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フィリピンでドゥテルテが支持されるワケ~『ローサは密告された』


だがドゥテルテ大統領は、選挙戦の遊説中から「麻薬を所持したら頭を撃ち抜いてやる」と暴言を繰り返してきた。「麻薬戦争」の名の下、何千人もの市民が警官あるいは何者かに殺害されている状況をいわば容認してきたと指摘されている。ドゥテルテ政権下であれば、ローサは殺されていたのでは? そう聞くと、メンドーサ監督は「たぶん、殺されていたかもしれないね」と答えた。「でも、彼女のような人も、変われるかもしれない。ドゥテルテ政権の対処は厳しいが、よりよい暮らしのためにはね」

『ローサは密告された』より © Sari-Sari Store 2016

メンドーサ監督は、昨年と今年7月の2年連続で監督としてドゥテルテ大統領の施政方針演説の様子を映像に収めた。監督自身、ドゥテルテ大統領による「麻薬戦争」を支持している。

ブリランテ・メンドーサ監督

なぜ? 尋ねると、メンドーサ監督は「熱烈な党員だとか政権派というわけではなく、政権が私の考えに沿う限り、支持している。現政権のみならず、過去の政権もだ。政府が人々のために働く限り、人々が支持するところを支持する、ということだ」。そう前置きしたうえで、こう語った。「ドゥテルテを支持する理由は、私も彼同様、麻薬取引が蔓延する問題をなんとかしたいと考えているためだ。今は麻薬戦争の真っただ中。『戦争』と呼ぶ限り、犠牲者は出るし、何らかの影響はある。無実の人が死に至ることもある。貧しい人たちだけが犠牲になっているわけでもない」


実際、強硬な「麻薬戦争」による「効果」も実感しているそうだ。「次回作のため3日前、同じようなスラム街に取材に行ったのだが、取材を受けた人の話では、今作で描いているような麻薬密売は最近、ずいぶん減ったとのことだった。もちろん、この問題は一夜で解決できるものでもないし、なかなか改善されていないところもあるが、自分もそうしたコミュニティーの近くに住んでこの目で見ている限り、この手の事件は非常に減っていると感じる」

『ローサは密告された』より © Sari-Sari Store 2016

メンドーサ監督はドゥテルテ観の国内外での違いについて、さらに語った。


「思うに、メディアの間違ったとらえ方がある。ドゥテルテは外国メディアには不人気だ。彼らは死者が出ている点や、人権問題ばかりに注意を向け、かつセンセーショナルに取り上げる。でもあなたの質問をフィリピンで街の人たちにぶつけてみれば、きっと私と同じような答えが返ってくるだろう。私たち自身が、麻薬問題による影響を被っているためだ。2日前、路上生活者にインタビューしたら、うち1人がいなくなった。何が起きたのかと思ったら、マリファナがらみで拘束されたとのことだった。それぐらい麻薬の蔓延が深刻なんだ。ドゥテルテが完璧な大統領だとは言わないし、賛成しない政策もあるが、彼がとてもまじめに麻薬問題に取り組んでいることはわかる。多くの人がこの点を見ていないのは残念なことだ。彼はあなたたちの国の典型的な国家トップではないし、報道陣の前で口汚い言葉も使うが、彼の施策を見れば、この国を変えようと実に集中してまじめに取り組んでいることがわかる。これだけ熱心に取り組む現場主義の大統領は、見たことがない」

『ローサは密告された』を撮影中のブリランテ・メンドーサ監督 © Sari-Sari Store 2016

これこそが、国際社会からは批判を浴びながらも、国内でなお約8割もの高い支持率を誇るドゥテルテ大統領がよって立つところなのだろう。




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藤えりか(とう・えりか)

朝日新聞GLOBE記者。

1970年生まれ。経済部や国際報道部などを経て2011~14年にロサンゼルス支局長、ラテンアメリカを含む大統領選から事件にIT、映画界まで取材。映画好きが高じて脚本を学んだことも。『なぜメリル・ストリープはトランプに嚙みつき、オリバー・ストーンは期待するのか~ハリウッドからアメリカが見える』(幻冬舎新書)が3月30日に発売。読者と語るシネマニア・サロンを主宰。ツイッターは@erika_asahi



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