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トランプ政権の「台湾への武器供与」と「ノドに刺さった小骨」

軍事社会学者 北村淳 #8



戦闘機や爆撃機はじめとする中国軍機数機が、2017年7月20日、台湾上空に接近したため台湾空軍は戦闘機を緊急発進させた。中国当局によれば「通常の訓練の一環」ということになるが、このほどトランプ政権が踏み切った「台湾への武器供与」に対する抗議活動の一環と考えるべきであろう。


対中国強硬姿勢の復活

トランプ政権が発足するや、かねてよりアメリカ国防当局がもっとも警戒していた動きのひとつ——北朝鮮による核弾頭搭載長距離弾道ミサイル(ICBM)の完成が近づきつつある状況が明らかになった。とはいっても、北朝鮮を先制攻撃してICBM開発を葬り去ることなど不可能である。トランプ大統領は中国政府による圧力を期待した。


ところが、期待していたような効果は上がらず、ICBM試射は成功してしまった。そして「そもそも中国が本気で北朝鮮に対して圧力を加えているのか?」という疑念も濃くなってきた。ということは、中国に対して軍事的に妥協的態度をとり続ける必要性は希薄になったことを意味する。その結果、大統領選挙期間中に全面に押し出していた中国を牽制するような政策を復活させ始めた。そのひとつが、中国が嫌がる「台湾に対する武器供与」の再開である。


トランプ政権による台湾への武器供与第一弾

「台湾に対する武器供与」——すなわち「台湾への武器輸出」——を再開するといっても、ただちにアメリカ製の武器が台湾に輸出されたわけではない。現段階では、国防長官直属の組織である国防安全保障協力局(本コラム#6参照)が台湾への供与品目を決定し、その輸出リストをホワイトハウスが承認したことを意味している。引き続き、連邦議会で検討され、最終的な承認がされると、ようやく台湾への輸出が開始されることになるのだ。

台湾領空に接近した中国軍爆撃機とスクランブルする台湾軍戦闘機(台湾国防省)

これまでも、歴代アメリカ政権は「台湾に対する武器供与」をたびたび実施してきた。そもそも武器輸出は高度に外交的な意味合いを持つものであるが、とりわけ台湾への武器輸出は外交的メッセージとしての役割が大きい。そして、それは「台湾関係法」(アメリカの国内法)を法的論拠として実施されているため、「台湾へは〝防御的兵器システム〟に限って供与する」という建前になっている。これは、日本におけるいわゆる専守防衛に関連しての〝防御的兵器〟と似通った〝はなはだ苦しい表現〟といえる。


「台湾に対する武器供与」には、軍用機や軍艦やミサイル、それにレーダ装置といった兵器システムそのものの輸出だけでなく、それらのシステムアップグレードなどの技術的支援も含まれる。今回、トランプ政権が台湾へ供与することを承認した兵器システムは下記の7項目である。


1:SM-2 Block IIIA

かつてアメリカが台湾に供与したキッド級駆逐艦に搭載する新型の対空ミサイル(航空機や巡航ミサイルを迎撃する)を16セットと各種関連パーツ。

2:MK-54 conversion kit

台湾軍が保有している旧式のMK-48短魚雷をMK-54短魚雷に改造するシステム。MK-54短魚雷(軽魚雷)は現在アメリカ海軍が装備している潜水艦攻撃用の魚雷で、水上艦艇、潜水艦、航空機から発射することが可能。

3:MK-48 Mod 6AT 

現在、アメリカ海軍の潜水艦(攻撃原潜、戦略原潜)に装塡されている高性能のMK-48長魚雷(重魚雷)を46基。MK-48長魚雷は、大型の水上艦船も潜水艦もともに攻撃することが可能。

4:AN/SL032(V)3 upgrade

アメリカが台湾に供与したキッド級駆逐艦に搭載されている電子戦情報処理システムのシステムアップグレード。

5:AGM-154C JSOW missiles

アメリカ海軍、海兵隊、空軍の攻撃機が装備している対地攻撃用滑空誘導爆弾AGM-154Cを56発。

6:AGM-88B HARM

敵のレーダーシステムを攻撃するために航空機から発射する空対地ミサイルAGM-88Bを50基と練習用AGM-88Bを10基。

7:Surveillance Rader Program Operation & Maintenance

台湾軍の早期警戒監視レーダーシステム(ハードウェア、ソフトウェア、関連設備)の補修とメンテナンス作業。

改修される早期警戒監視レーダーシステム(写真:レイセオン社)

(次ページへ続く)

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