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かつてのマクドナルド、現代のアマゾン~『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』を撮影するジョン・リー・ハンコック監督(手前中央) © 2016 Speedee Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED



シネマニア・リポート Cinemania Report [#55] 藤えりか



ビッグマックがその地でいくらで売られているか――。そんな「ビッグマック指数」と呼ばれる各国・地域別の購買力比較の方法があるぐらい、いまやマクドナルドは世界どこにでもある。29日公開の米映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(原題: The Founder)(2016年)は、グローバル化の象徴でもあるこの企業の誕生の舞台裏を描いた。「大」が「小」を飲み込む米国の企業文化など作品に込めた思いについて、ジョン・リー・ハンコック監督(60)に電話でインタビューした。


今作の舞台は第2次大戦後の好景気にわく1954年の米国から始まる。イリノイ州を拠点にシェイクミキサーを売り歩いていた営業マンのレイ・クロック(マイケル・キートン、65)はある日、カリフォルニア州南部サンバーナーディノのドライブイン・レストランから6台もの注文を一度に受ける。どんな店か興味をもったレイが車ではるばる会いに行くと、ディック(ニック・オファーマン、47)とマック(ジョン・キャロル・リンチ、53)のマクドナルド兄弟が営む「マクドナルド」が行列ができる大にぎわいとなっているのを目の当たりにする。ウェイトレスもいないのに、20~30分待つのが普通のハンバーガーを30秒ほどで出す効率の良さに目を見張り、全米展開のフランチャイズ化を思いつく。小規模経営で品質を保ちたい兄弟は乗り気ではなかったが、レイはなんとか説得して契約を取りつける。次第に野心をたぎらせたレイは利益の追求に走り、兄弟との関係は悪化していく。

カリフォルニア州サンバーナーディノにあったマクドナルド兄弟による元祖マクドナルドの店舗を再現したセット。中央は撮影中のジョン・リー・ハンコック監督 © 2016 Speedee Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

米マクドナルド社のウェブサイトを見ると、「レイはマクドナルド兄弟のレストランを見いだした」「兄弟は新たなエージェントを探していたところ、レイが好機だと見てマクドナルド社の前身にあたるマクドナルド・システム社を創設した」と書かれている。だが今作で描かれている関係性は、そんな生やさしいものではない。契約社会であるはずの米国にあって、時に契約すら無視しながら「大」が「小」を飲み込んださまが描かれている。


ハンコック監督はレイによる「マクドナルド1号店」がシカゴ郊外にオープンした翌年に生まれた。青年期はちょうど、チェーン拡大期と重なる。だが、「こうした創業秘話についてはほとんど知らなかった」と言う。「マクドナルドの店舗に行くと、ブロンズの盾があって、『創業者レイ・クロック』と書かれている。米国でもたいていの人は彼が創業者だと思っているよ。でもこの映画が出たことで、多くの人が疑問に思うようになった」とハンコック監督。「思うに、今作を見た人の約3分の2は、レイを好きになれないと思うだろう。『もうマクドナルドでは食べない』と言う人たちもいた。でも残る約3分の1は、彼なしではマクドナルドは世界的にこれほど拡大していなかった、とビジネスの観点から感心するだろう。『レイはやるべきことをした』と言う人もいた。彼がいい人物か悪いやつか、人によって見方は分かれるところだろう」

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』より © 2016 Speedee Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

実際、「マクドナルド以前」の米国は、こうしたドライブイン形式のハンバーガー店にもウェイトレスがいた。初期の『刑事コロンボ』など往年の米テレビシリーズや映画を見ると、駐車場で待つ客の車をウェイトレスが回り、取り付け器具付きのトレイを開いた車窓に載せて給仕する場面があるが、これがかつては一般的だった。人件費がかさむこうした体制から抜け出す仕組みはマクドナルド兄弟が考えたが、それがネットもない時代に全米で広まったのはレイのフランチャイズ化が大きいだろう。


ハンコック監督自身、「レイはなんてずるいんだ、自分ならそんなことはしないと思う一方で、すごく働き者の彼に恐れ入るところが大いにあった。彼は複雑な人物。その点にも興味をそそられた」

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』より © 2016 Speedee Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ハンコック監督は、レイについての書物や記事を読んだうえで、ディック・マクドナルドの孫ジェイソン・フレンチに会った。「彼は非常に手助けしてくれた。マクドナルド兄弟が残した書簡や書類などを見せてもらい、録音テープも聞いた。兄弟の視点から見たインサイドストーリーがそこにはあった」とハンコック監督。ジェイソンは撮影現場にも訪ねてきたが、「祖父ディック役のニックとすごく似ていて驚いた。必ずしも似たキャストにしようと思っていなかったから、まったくの偶然だった」。ジェイソンら親族は完成した映画を見て、「満足していた。ジェイソンは祖父についてよく知らなかったから、そのアイデアや創意工夫に触れてとても誇りに思う、と言っていた」という。



(次ページへ続く)

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