RSS

Webオリジナル

IT時代に教育はどうあるべきなのか?! (1) 松井博 #07


学校教育は今、完全に曲がり角に来ています。世の中がものすごい勢いで変わっているというのに、教育だけが明治から続いてきたやり方からあまり変わっていないのです。



明治〜昭和と続いてきた教育方法というのは、全員が同じ教室に座り、同じ教科を同じスピードで学ぶというものです。工業化時代に必要な、一定の基準を満たした画一的な人材を効率的に生み出すには、効果的な方法だったのでしょう。



しかし、このやり方はどうやらもう機能しなくなってきているようです。IT時代に必要な人材の育成は、この工業化時代の延長線上的なやり方ではどうやらうまくいかないのです。おそらく、6・3・3制の見直しを含め、抜本的な制度設計が必要な時期に来ているのではないでしょうか。



ショッキングだったシリコンバレーの小学校

ここで少し軸を変えて、私自身が体験したアメリカの教育について話してみたいと思います。私は仕事の都合で16年前に家族を連れてシリコンバレーへと移住しました。子供がまだ小学校2年生と幼稚園年長の時のことです。そこで一番驚いたこと、それはアメリカの小学校における圧倒的なまでの読み書きの量でした。



シリコンバレーの小学校などというと、小学校くらいからプログラミングをやっているような気がしますが、何よりも優先しているのはまず読解力をつけることと、自分の意見を文章に落として表現する能力を養うことなのです。



子供に初めてプレゼンの課題が出たのはまだ小学校2年のときです。毎週のように課題図書が出され、本当に読んだかどうかのチェックを兼ねて、オンラインのクイズが義務付けられていました。そんなわけで、とにかく少なくとも毎週1冊は本を読み終わらせていたのです。

米国では、小学生が参加するプレゼンテーション大会もさかんだ=2012年6月、米ニューヨーク市


この読書量だけでも驚異的に感じたのですが、さらに輪をかけて驚いたのが作文の量です。こちらも毎週ありました。しかも一回が結構な量なのです。日本の読書感想文のようにフリーフォーマットの散文ではなく、あらかじめフォーマットが決められており、それに沿って随分と色々なものを書かされていました。



「犬と猫ではどっちが好きか比較して論じよ」「将来就きたい職業は何か、またそこに至るにはどのような準備が必要なのか」などなど、毎週テーマは変わっていきます。これが小学校3年生くらいから本格的に始まり、高校を卒業するまで続くのです。また、高校からはディベートなども本格的に加わります。そして大学ではさらに輪をかけてハードルが高い課題が出されます。



30年前のアメリカの大学は?

子供だけでなく、僕自身もアメリカの大学に進学した時に同じような体験をしました。それまで僕が知っていた「勉強」というのは、授業を聴いたり、ノートを取ったり、何かを暗記をしたりと、ひたすらインプット作業を繰り返すことだったのです。例えば、自分の中高時代を振り返っても、こんな感じです。



英語・・・単語、熟語を暗記。和訳/英訳の反復練習。

数学・・・公式を暗記。与えられた演習問題をたくさんこなす。

国語・・・漢字を暗記。教科書を読む。普通の物語を沢山読む。

理科・・・丸暗記。

社会・・・丸暗記。



ところがアメリカの大学に進学していると、何もかもが全く違ったのです。周りの学生はネイティブな上に、子供の頃から読み書きを繰り返してきているわけです。ところが自分だけが未経験で、しかもそれを英語でやるのです。アメリカで教育を受けていれば当たり前の作文の形式を何一つ知らず、本当に四苦八苦しました。



暗記で乗り切れる教科が少なかったのも、しんどかった原因の一つです。アメリカでも暗記教科がないわけではないのですが、それらが日本よりも少ないのは確かです。



アメリカの教育は少しはマシなのか?

ここまで読むと、アメリカ礼賛のように感じる方もいることでしょう。しかし現実に目を向けてみると、日本がズルズルと相対的な地位を下げる中、グーグル、アップル、アマゾン、テスラなどなど、先陣を切ってITの世界を切り拓いてきたのはどれもアメリカの企業なのです。そしてそこで幹部として働く人々は、アメリカで高等教育を受けた人たちばかりなのです。

米国では新聞などを使って「考える力」を養う授業も多い=2005年、バージニア州


無論、アメリカの教育制度が完全無欠なわけではありません。優秀な人材を大量に輩出する一方、それ以上に多くの人々を置き去りにしたのもまた、アメリカの教育制度です。ただ、アメリカの方が文句なしに優れているな、と感じる部分もあります。それは「自分で考える訓練」をさせる部分です。



おそらく、均質な学力を持った労働者を効率よく産出する、という意味においては、日本の教育制度の方がよほど優れていたのではないかと思います。しかし、もはやそのような人材はあまり必要とされていないのです。日本は「失われた30年」から脱するため、そしてアメリカはこれ以上の落伍者を出さないためにも、教育制度を抜本的に改革すべき時期に来ているのです。



「PDCAサイクル」

ここで、私が考える効果的な学習方法をお話したいと思います。別に何も新しいことはありません。それは「やりたいこと」を見つけることと、「PDCAサイクル」を実行することです。


(次ページへ続く)

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

Back number | バックナンバー

松井博 ITが創る未来のカタチ #06 変わる消費の形 (3) 量販店から個人経営店へ

松井博 ITが創る未来のカタチ #06
変わる消費の形 (3) 量販店から個人経営店へ

松井博 ITが創る未来のカタチ #05 変わる消費の形 (2) モノからコトへの近未来

松井博 ITが創る未来のカタチ #05
変わる消費の形 (2) モノからコトへの近未来

松井博 ITが創る未来のカタチ #03 その頃、発展途上国では

松井博 ITが創る未来のカタチ #03
その頃、発展途上国では

松井博 ITが創る未来のカタチ #02 白人たちはなぜ貧困化したのか

松井博 ITが創る未来のカタチ #02
白人たちはなぜ貧困化したのか

松井博 ITが創る未来のカタチ #01 世界はオタクたちが回している

松井博 ITが創る未来のカタチ #01
世界はオタクたちが回している

Popular article | 人気記事

さらに記事を見る
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示