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日韓、単純な「善悪」構造でなく~『ラスト・プリンセス―大韓帝国最後の皇女―』

方子妃を演じる戸田菜穂(右)と、徳恵翁主役のソン・イェジン © 2016 DCG PLUS & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

一方、日本統治下の悲劇を描きながら、直接の「悪役」は韓国人であるハン長官が中心。方子妃や宗伯爵ら日本の登場人物は、一貫して徳恵翁主を思いやる。例えば日本語で語る徳恵翁主に、方子妃があえて韓国語でいたわりの言葉をかける場面がある。互いに相手の言葉で話しかけるアイデアは、方子妃役の戸田が出したという。


ホ監督は言う。「今作を撮るにあたって僕は、日本が悪で韓国は善だという単純な構造では描きたくはなかった。徳恵翁主をいじめる日本人を出すのも突拍子がない感じで、ストーリー上の必然性もなかったんです」

ホ・ジノ監督=早坂元興撮影

ホ監督によると、韓国では「当時の王室を美化しているのではないか、という批判を受けた」という。「徳恵翁主や高宗への歴史的な評価は、韓国ではいまだに分かれている。あまりにも力なく国を奪われた弱々しい王という見方をする人たちもいる。もちろん、それでも最善を尽くし、賢明な行動をとったとの見方をする人たちもいるが、歴史をどう解釈するかによって今作への見方は違ってくる」


© 2016 DCG PLUS & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

それにしても、韓流ブームが起きた2000年代とは隔世の感があるくらい、韓国映画の監督や俳優の来日はこのところ激減している。その盛衰を目の当たりにしてきた監督として、今作の日本公開に際して何を思うのだろうか。「政治的には韓国と日本は難しいところがたくさんあり、今もデリケートな時期にあると思うが、韓国で新政権が発足したことで、以前よりもよくなるのではないかという期待もある。そうした時期に今作が日本でも公開されるのは、とても意味があると思う。日本は文化的にとても包容力がある国だと感じている。政治的には何かとぎくしゃくしているように見えるが、映画に携わる人たち同士の関係はとても良好。だから映画は映画でもっと活発にこれからも交流していくべきだと思う」とホ監督は言う。


「今作は韓国人の視点から見た韓国王室の物語であり、日本の観客の方にとっては居心地の悪い部分があるかもしれない。でも今作が描こうとしているのは、悲劇的な人生を生きたひとりの女性の物語。見た方々には、理解・共感していただけるのではないかと思っている」


そのうえで、インタビューの最後の言葉が印象的だった。

ホ・ジノ監督にインタビューする筆者=早坂元興撮影

「例えば日韓の和解のための企画映画を両国で一緒に作るといったことよりも、お互いの視点でお互いが感じたものを作って、それを互いにたくさん見ていくことが、相互理解にきっとつながっていくと思う。その国の視点で描かれた映画であっても、その中には間違いなく、お互い同じ人間なのだと感じられる普遍性がある。お互いの生き方や人生が描かれた映画をこれからも互いにたくさん見ていくことで、もっと近くなれるんじゃないかと思う」




[最近のシネマニア・リポートなど]

『ローマ法王になる日まで』

『LOGAN/ローガン』

『おじいちゃんはデブゴン』

『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

『台北ストーリー』

『ノー・エスケープ 自由への国境』

『美女と野獣』

『午後8時の訪問者』

『ぼくと魔法の言葉たち』

『はじまりへの旅』

『牯嶺街少年殺人事件』

『ラ・ラ・ランド』

『未来を花束にして』





藤えりか(とう・えりか)

1970年生まれ。経済部や国際報道部などを経て2011~14年にロサンゼルス支局長、ラテンアメリカを含む大統領選から事件にIT、映画界まで取材。映画好きが高じて脚本を学んだことも。現在GLOBE記者。『なぜメリル・ストリープはトランプに嚙みつき、オリバー・ストーンは期待するのか~ハリウッドからアメリカが見える』(幻冬舎新書)が3月30日に発売。ツイッターは@erika_asahi



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