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「国境」「壁」「ヒスパニック」...最後のウルヴァリンは社会派の問題作~『LOGAN/ローガン』

記者会見に臨むヒュー・ジャックマン=外山俊樹撮影



シネマニア・リポート Cinemania Report [#49] 藤えりか



社会派作品は好きだけど、アメコミのヒーロー映画は見ない――。そんな方こそ、この作品に監督が込めたメッセージに耳を傾けてほしい。ヒュー・ジャックマン(48)主演『LOGAN/ローガン』(原題: Logan)(2017年)が1日公開された。言わずと知れた米マーヴェル・コミックスの人気コミックを元にした『X-メン』シリーズのキャラクター、ウルヴァリンのスピンオフ作品。ヒューの出演作としてはシリーズ最後になる今作は、トランプ米政権がぶち上げたメキシコ国境の壁建設がモチーフとなっている。来日したヒューとジェームズ・マンゴールド監督(53)に、記者会見で質問した。


『X−メン』シリーズは、マーヴェルの名物編集者で名誉会長のスタン・リー(94)が生んだ人気コミックがベース。突然変異によって誕生、超人的な力を持つミュータントたちが人間社会から危険視されるなか、共存の道を探る「X−メン」と、人間を敵視する「マグニートー」とに分かれて戦う実写化第一弾『X-メン』(2000年)以来、17年にわたって続いてきた。最新作『LOGAN/ローガン』は、ヒュー演じるウルヴァリンの登場作品としては9作目で、ウルヴァリンを中心に据えたスピンオフ作品では3作目となる。

© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

舞台はミュータントの大半が死滅した2029年の米国。長年の戦いで疲弊し超人的な治癒能力も衰えたウルヴァリンことローガンは、リムジン運転手として日銭を稼ぎながら、メキシコ国境近くの廃工場を住みかに、太陽光のもとでは生きられないミュータントのキャリバン(スティーヴン・マーチャント、42)とともに、かつてX−メンを率いながら老いたプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート、76)の世話を続けていた。ある日、ヒスパニックの看護師ガブリエラ(エリザベス・ロドリゲス、36)から、同じくヒスパニックの少女ローラ(ダフネ・キーン)をカナダ国境のノースダコタまで送り届けてほしいと懇願される。ウルヴァリンさながらの戦闘能力を持つローラは、ある実験施設から命からがら逃げてきたのだった。警察の取り締まりに名を借りて、ドナルド・ピアース(ボイド・ホルブルック、35)率いる武装集団がローラ奪還を図って襲い来るなか、ローガンらは国境をめざして命がけで逃げ惑う。


共同で脚本も書いたマンゴールド監督は、東京での記者会見で語った。「最後のウルヴァリン作品を引き受けるにあたって、ヒューと私は、これまでのシリーズの伝統からある意味脱却しなければならないと思った。ウルヴァリンが世界を終焉から救う、あるいは地球や街を救うといった仕立てにはせず、これまでとは違ったものにしたかった。ヒュー自身もそうしたがり、私の背中をさらに押した」。タイトルにあえて『X−メン』や『ウルヴァリン』を入れなかったのも、従来のイメージを打ち破りたい狙いからだそうだ。

ヒュー・ジャックマン(左)とジェームズ・マンゴールド監督=外山俊樹撮影

マンゴールド監督にとっては、日本を舞台に真田広之(56)らも出演した『ウルヴァリン: SAMURAI』(2013年)以来のシリーズ監督作。だが、米コロンビア大学大学院で映画を学んだ彼の監督作品の系譜を眺めると、アメコミあるいはSFの映画は、その『ウルヴァリン: SAMURAI』と今作『LOGAN/ローガン』のみだ。以前はどちらかというと、ヒーローものではない、いわゆる大人のドラマで名をはせてきた。例えば、精神病棟の患者をアンジェリーナ・ジョリー(41)が演じてアカデミー助演女優賞に輝いた『17歳のカルテ』(1999年)、リース・ウィザースプーン(41)がアカデミー主演女優賞を獲得した『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005年)、ヒューが現代に舞い込む19世紀の公爵となってメグ・ライアン(55)と共演した『ニューヨークの恋人』(2001年)、といったように。


『X−メン』シリーズ全体を見渡しても、アメコミやSFの常連というより、大人向けの良作や社会派作品で知られてきた監督が目立つ。シリーズ第1作『X−メン』と第2作『X−MEN2』(2003年)、『X−MEN:フューチャー&パスト』(2014年)、『X−MEN:アポカリプス』(2016年)のブライアン・シンガー監督(51)は、ケヴィン・スペイシー(57)にアカデミー助演男優賞をもたらした秀作『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)で一躍有名に。『ウルヴァリン:X−MEN ZERO』(2009年)のギャヴィン・フッド監督(54)は、南アフリカの旧黒人居住区ソウェトを舞台にアパルトヘイト(人種隔離)政策廃止後も残る差別や格差を描いた英・南ア合作『ツォツィ』(2005年)でアカデミー外国語映画賞を受賞。彼の最新作はシネマニア・リポート[#26]で取り上げた、現代の戦場の現実を鋭く切り取ったヘレン・ミレン(71)主演の『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(2015年)だ。

© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
(次ページへ続く)

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