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「政治・社会派映画はネット配信頼み」新たな時代の到来~『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』

記者会見に臨むブラッド・ピット=外山俊樹撮影



シネマニア・リポート Cinemania Report [#47] 藤えりか



政治的・社会的に議論を呼ぶような、それでいて予算をかけた大人の映画を見たければ、劇場よりもネット配信サービスへ――そんな状況が本格化してきた。実在の元アフガニスタン駐留米軍トップをモデルに戦争を皮肉ったブラッド・ピット(53)主演・製作の米映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』(原題: War Machine)(2017年)が26日に公開された。見られるのは劇場ではなく、基本的に米国の動画配信最大手ネットフリックスにて。ブラッドやデヴィッド・ミショッド監督(44)らが来日、ネットフリックスと初めて組んだ狙いと背景を語った。

Netflixオリジナル映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』

今作はアフガニスタンで2010年、当時の駐留米軍司令官スタンリー・マクリスタル(62)に取材したジャーナリストの故マイケル・ヘイスティングズによるノンフィクション『The Operators: The Wild and Terrifying Inside Story of America’s War in Afghanistan(原題)』に基づく。劇中、長びくアフガン戦争を好転させたいオバマ大統領の肝いりで着任した陸軍大将、グレン・マクマーン司令官(ブラッド)はまさにマクリスタルがモデルだ。米軍率いる国際治安支援部隊(ISAF)の高官グレッグ・パルヴァー(アンソニー・マイケル・ホール、49)は、トランプ政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)に就任しながら対ロ接近が表面化して辞任した、当時の情報将校マイケル・フリン(58)を意識した設定となっている。マクマーン司令官は米軍増派を求めるが、アフガン撤退を望むオバマ政権は難色。マクマーン司令官はメディアを駆使して3万人の増派をとりつけるが、米軍による民間人の犠牲が出て、アフガン大統領選の不正も明らかになり、政権と軍部、また米・アフガン関係もぎくしゃく。ジャーナリスト、ショーン・カレン(スコット・マクネイリー、39)が米誌ローリング・ストーンに書いた記事も波紋を呼び、マクマーン司令官は窮地に陥ってゆく。


カルザイ・アフガン前大統領(59)を演じたのは『ガンジー』(1982年)でアカデミー主演男優賞の英俳優ベン・キングズレー(73)。アフガン撤退を求める世論を背景にマクマーン司令官に厳しい意見をぶつけるドイツの政治家役には『フィクサー』(2007年)でアカデミー助演女優賞の英女優ティルダ・スゥイントン(56)と、実力派が脇を固めている。米誌ハリウッド・リポーターによると、製作費は約6千万ドル(約67億円)に上る。かつ、ネットフリックスのオリジナル映画のプロモーションで主演俳優が来日するのは初めて。力の入れようが伺える。米国ではごく一部、劇場でも公開されるが、基本的には米太平洋時間の26日午前零時(日本時間同日午後4時)、190カ国以上で展開するネットフリックスのサービスを通じて配信が始まった。

Netflixオリジナル映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』

劇中、マクマーン司令官や戦場での様子、ホワイトハウスのやり取りは、かなり滑稽な形で描写されている。


脚本も書いた豪州人のミショッド監督は東京での記者会見で語った。「米国も豪州も、アフガンで16年近くも戦争している。恐ろしいことだ。アフガン戦争についてさまざま読んできたが、なぜここまで長期化したのか、またとても頭がよくて有能とみられる人たちがなぜいまだに、勝利は目前かのように振る舞えるのかまったくわからなかった」。そうしてヘイスティングズのノンフィクションに出あい、「この疑問だらけの愚かな状況がいかにして起きたのか、見えてきた気がした。ある種妄想にとりつかれた司令官の気質が中心にある。トップに登りつめようという野心によって、現実世界からかけ離れ、地上戦の経験や民間人の世界からも遠いものとなってしまった。この終わりのない戦争の根底にあるのは、そうした人間のある種の妄想なのだと思うようになった」

ブラッド・ピット(右)とデヴィッド・ミショッド監督=外山俊樹撮影

ブラッドが続けた。「(製作にあたって)最初はそうした司令官の具体的な描写から入り、次第に全体的な構造、特に米国の状況へと広げていった。米国防総省の利害、ホワイトハウスの利害、1日24時間体制のニュースサイクル、そうした構図がいかに今の状況を長引かせているか、問題提起をしたかった。若い兵に命がけの仕事をさせ、民間人に多大なる犠牲を払わせていることをも映画は描いている」「勝利とは何だ?米国が考える勝利、その定義するところって何なんだ?成し遂げうるものなのか?という疑問も投げかけたかった。従来のやり方に変わる戦略や戦術を考える時期にきているのではないか、と本当に思う。それこそが今作に乗り出すきっかけだった」


今作の製作は、ブラッドらが創設、最高経営責任者(CEO)を務める映画製作会社「プランBエンターテインメント」がネットフリックスと組んで進めた。プランBの共同社長ジェレミー・クライナーは、今作の元になったノンフィクションの著者ヘイスティングズから「映画化の際には戦争を美化することなく、問いを投げかけてほしい」と言われていたそうだ。残念なことにヘイスティングズは2013年、ロサンゼルスで自動車事故により亡くなったが、「今作がヘイスティングズの思いを実現していることと願う」とクライナーは言った。

ブラッド・ピット(右から2人目)とデヴィッド・ミショッド監督(左から2人目)、プランBエンターテインメントの共同会長のジェレミー・クライナー(左端)とデデ・ガードナー(右端)=外山俊樹撮影
(次ページへ続く)
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