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「心の筋トレ」でオレは変わるか!?

オヤジ記者のマインドフルネス&仏教修行〈その1〉




「タラレバばかり言っていたら、こんな歳になってしまった」


現在、テレビドラマも放映中の漫画「東京タラレバ娘」(東村アキコ作)は、こんな切ない言葉で始まる。


「タラレバ」というのは「あの頃もっと努力してい『たら』良かったのに」「あの時、ああしてい『れば』こんなことにはならなかったのに」と、過去のことばかり思い煩ってくよくよすることだ。それに加え、「こうなっ『たら』どうしよう」「ああな『れば』いいのに」という、未来への根拠無き不安や期待も含まれる。


漫画の主人公は結婚に向けて焦る33歳の女性脚本家だけど、この言葉は52歳のヒラ記者である今の私にもぴったりとあてはまるのだから、嫌になってしまう。「若い頃、もっとまじめに仕事に取り組んでい『れば』、もうちょっと出世できただろうに」。「このまま歳をとっていっ『たら』、人生後悔の塊で終わっちゃうんじゃないの」。一見、コワモテの印象を与えがちなオヤジ記者=私の内面には、かくも情けない思いが渦巻いているのだ。


だが、すでに定年までのカウントダウンに突入している今、これ以上「タラレバ」を繰り返している余裕はない。何とかして、自分自身を変えなければ……。


あせりばかりが募る中で、耳に飛び込んできたのが、米国・シリコンバレーで一大ムーブメントになっている「マインドフルネス」という言葉だ。聞けば、瞑想を中心とする心の訓練方法で、源流は東南アジアを中心に広まる「上座部仏教」、さらには2600年前にブッダ自身が説いた教えにあるという。

Wisdom2.0のウェブサイトから

マインドフルネスの訓練を続けることで、「今、ここ」に意識を集中させられるようになり、仕事も人生も飛躍させられるとか。過去への悔いや未来への不安にさいなまれる「タレレバ思考」とは対極にあるようだ。


元グーグルのエンジニアで、現在はマインドフルネスの普及に努めているチャディー・メン・タンの著書『サーチ・インサイド・ユアセルフ』によれば、マインドフルネスによって「意のままに心を鎮める方法を学ぶ」「集中力と創造性が向上する」「成功に必要な楽観と回復力を育む」ことが可能とされる。


あまりにも良いことずくめで、思わず「ホントかよ!」と突っ込みたくなるものの、後がないオヤジ記者にとっては魅惑的な惹句であることも否定できない。


彼によれば、マインドフルネスは、散漫になりがちな心を「今、ここ」に引き戻す努力を繰り替えすことで、注意力という「心の筋肉」を鍛えるトレーニングのようなものだという。要するに「心の筋トレ」「心のライザップ」のようなものか!


勝手にそう解釈した私は、思い切ってマインドフルネスの世界に飛び込んでみることにした。


どうせやるならとことん、というわけで、15日に日本を発ち、サンフランシスコで2月17日から開催されるマインドフルネスの国際的イベント「ウィズダム2.0」に参加してくる。現地ではチャディー・メン・タンにインタビューし、マインドフルネスの草分け的存在とされるジョン・カバット=ジン博士が行うワークショップも体験する予定だ。

バンコクの寺で瞑想する出家したばかりの僧侶たち=ロイター

次いで、マインドフルネスのルーツとされる上座部仏教の国、タイを訪れる。タイ東北部の山中にあるスカトー寺副住職を務める日本人僧侶プラユキ・ナラテボーの協力を得て、同寺で一週間の瞑想修行に取り組むつもりだ。


果たしてオヤジ記者は心の筋トレ、修行を通じて「タラレバ思考」とおさらばできるのか。毒舌癖のある後輩記者に取材計画を得々と話すと、「太田さんが変わることを、心の底から願っていますよ」という皮肉たっぷりの答えが返ってきた。


くっそー、今に見ていろよ!


太田啓之(おおた・ひろゆき)

1964年生まれ。GLOBE記者。「入試とエリート」「医者とカネ」「不安な世界をハルキが救う」などの特集を担当。

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