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ブランドを可視化する

佐藤可士和(クリエイティブディレクター)

デザイナーは語る 5


2月5日発行のGLOBE190号は巻頭で「デザイン」を特集します。紙面に先立ち、私たちの取材に対して、熱く語ってくれたデザイナーの言葉をご紹介します。5回目は、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんです。




photo:Takahashi Yukari


――ユニクロ、楽天などのブランド戦略を担い、いまはヤンマーのブランド化に、総合プロデューサーとして携わっています。

ヤンマーは2012年、創立100周年を迎えました。その直後、山岡健人社長から「ヤンマーを次の100年に向けたブランドにしてください」と頼まれました。何をデザインして、とは言われていないんです。「社内で理念の整理はしたんだが、外から見たら何も変わっていない。それを見える形にしてほしい」と。


正直言って、それまでヤンマーには「ヤン坊マー坊」のイメージしかありませんでした。でも欧米ではプレジャーボートや船舶用エンジンなどのブランドとして名が知られ、エネルギー事業もやっている。国内と国外のイメージを一つにしてプレミアムブランドにしてほしいというのが依頼でした。「面白い。デザインの力をフル活用してヤンマーのやっていることを可視化していきましょう」ということになったのです。


――まずロゴマークを変えましたね。

「ヤンマー」の社名は、田んぼに飛ぶトンボの「オニヤンマ」と創業者の山岡孫吉氏の「ヤマ」をかけて名付けられています。トンボの羽とヤンマーのYをモチーフにしたマークを作り「FLYING-Y」と名付けました。そして海関連と農業用のウェアを作り、工場のユニホームにも展開しました。同じ頃に山岡社長から声がかかっていた工業デザイナーの奥山清行さんがトラクターなどの商品を担当されました。

ヤンマーの新しいロゴ「FLYING-Y」
(ヤンマー提供)


――反響はどうでしたか。

ウェアは、単なる商品というよりコミュニケーションにおけるメディアの一つ、メッセージでした。デザインはイッセイミヤケのデザイナーを経て独立された滝沢直己さんにお願いしたところ、機能性とファッション性のバランスのよいものを作ってくれました。これは発信力がとてもありました。いくら言葉でヤンマーの新しい理念を書いてもなかなか伝わらないけれど、今までと全然違うということが一瞬で伝わる。デザインの力には、すごくスピード感があり、イメージを立体的に伝えられるという特性があるのです。


――今の農業が抱える課題を解決したい、という思いも込められています。

ヤンマーという企業を通じて、日本の農業自体を新しく変えていく、農業の課題に一石を投じるというのは非常にやりがいがある。若い人に関心を持ってもらう、それがまさに未来じゃないですか。仕事の環境がよくなるとかモチベーションが上がる、ということは非常に大事です。だからオフィス、職場環境をデザインすることはブランド戦略そのものなんです。ただの作業をする場所なのか、それとももっと誇りを持って快適に仕事ができる場所なのかは大違い。多くの企業のブランド戦略を手がけていますが、オフィスのデザインも担当する割合はとても高いですね。


――いま、なぜデザインの力が求められているのでしょうか。

まず、インターネットで環境が劇的に変わりました。昔はBtoB(企業間取引)の企業を一般の人が知ることはあまりありませんでした。いまは企業がウェブサイトを持っていて、いくらでも見ることができる。透明になって、BtoBなのかBtoC(消費者向けビジネス)なのかはあまり関係がなくなり、消費者は企業を社会の中に存在している一つのブランド、と見るようになってきました。


そのなかで、ブランド化、アイデンティティーをどう表現してコミュニケーション活動をしていくかがすごく重要になっている。「伝わっていなければ、存在していないのと同じ」と僕はよく言っています。デザインの力を使えるか使えないかが企業にとって大きな分かれ道。そこを戦略的にやらないと、世界で戦っていけなくなってしまいます。


(聞き手・高橋友佳理)


さとう・かしわ

1965年、東京生まれ。多摩美術大学卒。博報堂を経て2000年に独立し、クリエイティブスタジオ「サムライ」を設立。ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略、セブン―イレブン・ジャパン、三井物産のブランディングプロジェクトのほか、国立新美術館のシンボルマークデザイン、NHK教育テレビ「えいごであそぼ」のアートディレクションなども手がけた。

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