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デザインの川上化、社会化、流動化

永井一史(博報堂デザイン社長)

デザイナーは語る 4




2月5日発行のGLOBE190号は巻頭で「デザイン」を特集します。紙面に先立ち、私たちの取材に対して、熱く語ってくれたデザイナーの言葉をご紹介します。4回目は、東京のブランド戦略を手がける博報堂デザイン社長でクリエイティブディレクターの永井一史さんです。




永井一史さん
photo:Takahashi Yukari

――東京を国内外に印象付けるためのロゴとキャッチコピーを担当しました。

東京は体系立って世界に発信することや、ブランドを考えるということを全くやっていませんでした。世界の名だたる都市はずっと前からそういうことをやっていたのですが。数年前から、東京でもきちんと考えようと委員会が立ち上がり私も関わっていました。グローバル化が進み、都市間競争、観光人口のパイの取り合いが起こっている中で、東京自体も新たな成長産業として観光をきちんと考えていこうということですね。


「東京」の前に長々と文字をつけてもよく分からない。シンプルなTOKYOという文字が目に入るだけでも訴求力があるんじゃないかなと考えました。また、新旧が結びついて新しいものが生まれていくダイナミズムが東京の魅力と考えたときに、単純に言葉で定義するのでなく、運動体として情報として入っていく方が本質的なんじゃないかと思って「&TOKYO」を作りました。

――いまビジネスの上でのデザインで何が起こっているのでしょうか。

3つのキーワードで語れると思います。川上化、社会化、流動化です。


20世紀型のデザインは川下で、いつも決まった製品があって、「そのデザインをしてください」というものでした。それが、一番はじめの段階からどんどんデザイナーがかかわって、モノやコトを作っていくようになりました。


社会化とは、こういうことです。20世紀は企業を中心にデザインが回っていた。今は、社会的な課題に向き合うデザイナーやデザインが増えてきました。日本では特に東日本大震災後に、加速しています。自分にも何かできることはないかと活動を始めた人はすごく多いし、リーマン・ショックと震災によって、経済成長を追求するだけでみんな幸せになれるのかと考えた人はたくさんいると思います。


流動化というのは、デザイン的な発想や方法論が他の分野にも拡張されて成果が出たりしていることです。シリコンバレーやベンチャー企業では早い時点でデザイナーが入った方が成功の確率が高いと言われています。ビジネスとデザインの接着が強まっていると思います。


博報堂の中でデザインはずっと大事にされてきました。上流工程からクライアントと一緒に新しい市場をつくるまでずっとやってきた、やろうとしてきたので、デザイン的価値観というのは会社のDNAとして持っています。私が博報堂デザインを作ったときも、提案はすっと通りました。


――一方でビジネスにおいて「デザイン」や「デザイン思考」が魔法の言葉のようになっている面も感じます。

「デザイナーでなくてもみんなにデザインが出来ますよ」と、いかに投げかけたところで、実際はみんなが出来るわけではないんですよ。いくら本に書いてあったり、研修を受けたりしたとしても。我々だって何年やっても、うまくできたと思うときと、難しいときとがある。クリエーションって苦労を積み重ねてできるもので、そんなに簡単なものではない。


デザイン思考というのは、見た目のかっこよさよりプロセスなんです。うまくできないというのはデザインの理解、習熟度の問題だと思います。そんなに甘いものではないということを理解した上で、デザインの重要性に関心を持って作りあげて欲しいですね。


(聞き手・高橋友佳理)



ながい・かずふみ

1961年東京生まれ。多摩美術大学卒業後、博報堂に入社。2003年、デザインによるブランディングの会社「HAKUHODO DESIGN」(博報堂デザイン)を設立、社長に就任。主な仕事にサントリー「伊右衛門」の広告、資生堂の企業広告など。15年度より、グッドデザイン賞の審査委員長を務める。

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