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人工知能と暮らす。そんな未来について考えた

2017年1月8日号「人工知能を愛せますか?」





8日発行のGLOBEの巻頭特集は「人工知能を愛せますか?」。元日から、中国の囲碁サイトでトップ棋士を次々と破った「謎の最強棋士」が人工知能(AI)だとわかり、話題となりました。日々進化を続けるAIを取材して、記者たちは何を感じたのでしょうか?




「技術の進化の速さに驚き」 田中郁也

技術というのは、いったん弾みがつくと、ここまで速く進化するのだ――。AIの5年間を振り返っての驚き、実感は、月並みながら、これに尽きるのかもしれない。


GLOBEは2012年秋、最初のAI特集を組んだ。サブテーマは「機械の知は人を超えるか」。その取材チームに参加して、取り上げたトピックのひとつが、グーグルのネコ認識。いまのAIブームのきっかけとなった。それが、「猫はどれだ/教えずに顔認識、グーグルが成功」の記事。いま読み返してみると、ちょっとおそるおそる書いているのが透けてみえる。


その可能性の大きさは感じられても、どこまで進化し、広がっていくのかは、未知数だった。当時、取材に応じてくれたグーグルのAI開発チームのリーダー、ジェフ・ディーン自身、「2030年、AIはどこまで進化する?」という問いへの答えは、「見たものを認知・判別する能力が人間とほぼ同等になっている」だった。


実際の技術の進化は、彼の予想をはるかに上回る。2030年を待つまでもなく、深層学習AIの画像認識の能力は、すでに人間を超え、その先に向かっている。応用の範囲も、さまざな分野に拡大している。その変化の速さ、範囲の広さが、AIがもたらす未来への不安や懸念も、もたらしている。


いまもAI開発のトップを走るグーグルのジェフ・ディーンは、この進化をどうみているのだろう。AI懸念派の心配の根っこは、どこにあるのだろうか。今回の特集で、私の取材は、そこから始めることにした。



「空恐ろしいようだが、楽しみでもある」 左古将規

人工知能を理解するのは難しい。取材を始めて間もない頃、今のAIブームを引き起こしたとされる「ディープラーニング(深層学習)」という技術について、東京大院生の鈴木雅大さんに基礎の基礎からレクチャーしてもらった。


学習とは何か。詳しくは特集本編をご覧いただくとして、私が驚いたのは、真剣な表情をした女性の顔画像を「笑顔」に変えるというデモンストレーションだ。画像に写った女性の目尻が下がり、口角が上がる。ごく自然な笑顔をAIは描き出した。


鈴木さんによると、あらかじめいろんな人の「笑顔」の画像と「普通の顔」の画像を大量に与えてその違いを比べさせることで、「笑顔の特徴」とは何かをAIが自分で学習する。するとそのAIは、真剣な顔の画像に「笑顔の特徴」をプラスすることで、その人の笑顔の画像をつくり出せるようになるというのだ。


「笑顔」とはどんな表情か、人間がわざわざ教えなくても、AIが経験を通じて自分で「感覚的に」学び取る。まるで人間の子どものように。


この深層学習という新たな「力」を得て、AIは社会のあちこちで成長を始めている。空恐ろしいようだが、楽しみでもある。


スマートフォンがこんなに普及した世の中を20年前に想像できなかったように、20年後の世界はきっと大きく変わっているだろう。その変化の一翼をAIの急激な成長が担うであろうと、多くの専門家が指摘している。


成長を始めたAIとどう向き合っていけばいいのか、各地を取材して考えた。



「軍事利用の懸念とはいずれ向き合うことになるだろう」 倉重奈苗

人工知能(AI)を使った「アルファ碁」が世界トップ級のプロ棋士を破り、世界中でAIブームがわき起こった2016年。この年の9月に私は北京特派員の任期を終えてGLOBE編集部に配属になった。


編集長に最初に告げられた取材が、「中国のAI事情」だった。


恥ずかしながら、特派員時代は気にもとめていなかった。ゼロからのスタートで、AIの専門用語や構造のイロハの勉強から始まったが、中国で初めての本格的なブームを迎えていることを知り、興味がわいた。


面白かったのが、「世界大会」を冠にした中国IT企業や研究者らが集う国際シンポジウムが中国各地で相次ぎ開かれていること。


取材した大会では、研究者は2000元(約3万4000円)もの会費を払って参加していた。米スタンフォード大の著名教授をはじめ、IT大手、ベンチャーの幹部が次々に登壇し、AI開発の現状と課題を熱く語る。会場脇ではAI搭載のロボットなどが展示され、商談会のような盛り上がりを見せていた。参加者の一人は「勉強と人脈づくりが目的」と話した。


中国の研究開発というと、共産党・政府と国有企業がタッグを組んで進めていくイメージがつきものだが、AI分野では民間のベンチャー企業の勢いが目に付いた。世界大会に参加していた中国ITベンチャー「科大訊飛」は、中国語の音声認識技術で市場シェアの過半数を占める。まだ30代の胡郁総裁は、私が日本人記者と知ると、日本人学者の名前を複数挙げ、「日本の科学者から非常に多くのことを教えてもらった」と語った。画像認識分野で著名な米スタンフォード大教授、李飛飛も世界大会にビデオメッセージを寄せた。李氏は1975年、北京生まれ。中国のこうした若手の研究者や企業家が、中国国内外でAI研究を支えている。


一方で、中国でも、AIの進化は人間の暮らしを豊かにすると楽観的な受け止めが多かった。ただ、科学技術の開発には、軍事利用の懸念はつきまとう。AIもしかり。いずれ向き合わなければいけないテーマになるだろう。



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