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南スーダンで和平を見守る(番外編) 

赤十字国際委員会フィールド要員・淡路愛




アフリカの南スーダンは、約40年の内戦を経て独立した後も、一部の地域で戦闘が散発している。日本では国連平和維持活動(PKO)に加わる陸上自衛隊の「駆けつけ警護」のあり方が報じられている舞台だ。この国で赤十字国際委員会(ICRC)フィールド要員として活動する淡路愛は、コラム「南スーダン 和平を見守る現場から」を報告してくれている。

写真提供:淡路愛


赤十字といえば、病院や献血を思い浮かべる方がほとんどだと思います。これは日本赤十字社の活動が定着させたイメージです。一方、「傷ついた人々を敵味方の区別なく救う」をモットーとする赤十字運動を始めたICRCはあまり知られていないようです。世界中の紛争地で、武力紛争の影響を受けている人々を国際人道法によって保護したり支援したりしています。


2011年にスーダンから独立したこの国では、部族対立を背景とした政権内の抗争が新たな紛争につながり、情勢は不安定です。私の仕事は上ナイル地域の治安や人道的状況を分析し、援助の方法を考え、実行すること。離散家族再会の支援や患者の緊急搬送の手配などです。


インフラが整っておらず、地元当局などと交渉し、安全な場所を確保してテントで寝泊まりします。食事は地元の女性に木炭で煮こんでもらった豆料理が定番。バケツにくんだ井戸水で体を洗うなど生活は楽ではありませんが、生き別れた子供と再会した母親の涙や、援助物資を受け取った村人の笑顔に触れるとき、「支える」ことの喜びを感じます。


活動は援助だけではありません。紛争のすべての当事者と対話し、無差別に攻撃する兵器を使ってはいけない、民間人を標的にしてはいけない、など武力紛争のルールを定めた国際人道法を守ることの大切さを説きます。敵方に拘束された人たちを収容所に訪ね、人道的な待遇を受けているかどうかもチェックします。



人道活動の様子を現場要員の目線で


GLOBEのウェブ版に寄せた4回のコラムでは、政府軍と反政府勢力の支配地域をまたいで食料を届ける話や、戦争で離ればなれになった家族の絆を衛星電話でつなぐ活動などを紹介しました。人道活動の様子を現場要員の目線で描くことで、遠く離れた日本の読者に関心を持ってもらえたら、との思いからでした。


読者からは、日本では南スーダンへの自衛隊派遣に絡む報道が多い一方、人道にかかわる情報が少ないので、コラムを通じてその一端を知ることができたという感想をいただきました。


「紛争地なんて危険ではないのか?」と聞かれることも多々ありますが、銃弾が飛び交う戦闘現場を走り回っているわけではありません。現場では常に情勢を監視していますし、首都ジュバにあるICRC代表部も派遣チームの位置を把握してバックアップしてくれます。紛争当事者との対話を通じ、安全対策のための情報も得ています。最前線で150年以上活動しているICRCの経験が、素早い情報分析や安全対策を可能にしているのです。


「中立・公平・独立」を原則とするICRC職員として、日本が南スーダンにいかに関与すべきかという政治的な議論に加わる立場にありません。ただ紛争地域で自宅を追われ、家財道具を失い、家族を亡くしたり生き別れたりした人々がたくさんいる現実があります。国際社会の支援を必要とする人たちのことを、日本の皆さんにも知ってほしいと思います。

写真提供:淡路愛



あわじ・あい

上智大学法学部国際関係法学科卒、カリフォルニア大サンディエゴ校国際関係・環太平洋研究大学院修了。時事通信社外信部記者、ニューヨーク特派員、ワシントン特派員などを経て2014年から赤十字国際委員会(ICRC)でフィールド要員。





南スーダン 和平を見守る現場から (1) 援助は前線を越えて

南スーダン 和平を見守る現場から (2) 配給現場のカオス

南スーダン 和平を見守る現場から (3)  途切れた絆を結ぶ

南スーダン 和平を見守る現場から (4) 家畜は大切な財産

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