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岡田武史さんに聞く中国サッカー事情


サッカー日本代表の監督を務めた岡田武史さんは2012年、13年のシーズンに、中国のスーパーリーグ「杭州緑城」の監督を務めた。中国人選手だけでなく、ファンからも厚い信頼を得た岡田さんに、中国のサッカー事情について聞いた。(聞き手・平賀拓哉)




photo:Senba Satoru

――海外の選手を高額で獲得している中国のサッカーリーグをどう見ていますか?

あれだけ世界中の有名な選手や監督が来ているというのは、決してネガティブなことじゃない。日本だって最初Jリーグができたとき、ジーコだ、レオナルドだ、リネカーだとやって来た。やっぱりそういう選手が来たら僕だって見たいもん。「爆買い」とバカにするんじゃなくて、買えるんだったら決して悪いことではない。アジアだとまだまだ、良い外国人選手を当てるかどうかで勝負が決まる。だからアジア・チャンピオンズ・リーグでも中国チームが勝ってきている。


――中国人選手のレベル

外国人選手に引っ張られて、僕がいたときよりも確実に上がってきていると感じますよね。


僕が監督をしていた杭州緑城では、若い子のセンスや技術は日本人以上ですよ。当時U18(18歳以下)の中国代表監督をしていたオランダ人が「オランダにもこんな奴らいないよ」って言うくらい。すごい才能を持っている。

だけどメンタルとか考え方とかの面で、ひとりっ子で可愛がられてスーパースター扱いされてきたせいか、ちょっと逆境になるとだめだったり、「闘え!」って言ったらキレちゃってけんかになっちゃったりする。


杭州緑城でも活躍しだしている若手選手が何人かいるけど、やっぱりそこまで輝かないんだ。ちょっとお金をもらったら酒に溺れたり遊んだりとか。要するに今まで完全に管理されているじゃない。ぜんぶ命令されて、言われたことはきちんとやれるけど、プロとしての自覚みたいなものがまだないんだよね。日本もJリーグができるまではそうだったんだよ。ジーコとか、すごく節制して、プレーをベストでやるための準備をしていくんだって。それで変わっていったんだよね。


――杭州緑城では、どんな問題点がありましたか

最初、とにかくみんなが僕に贈り物を持ってくるわけですよ。お茶とか焼き物とか、金の延べ板に論語が刻んであるものもあった。でも僕は受け取らず、実力で選んでいた。それであるベテラン選手が中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に「今の若い奴はうらやましい。監督にお金を渡したり贈り物をしたりしなくても、力さえあれば試合に出られる」と書いて、大騒動になった。


ある中国のコーチが代表チームの選手選考についても、「昔は代表に選ばれるのに金を払った」「同じ省出身の人脈があるから選ばれた」とか言っていた。結局、フェアなマーケットがないから、移籍するにも自分と同じ出身地のコーチがいるところとか、そういう人脈で移籍していく。今は外国人監督が多くなったから、そんなにないと思うけど。


――選手はどのように生活していたのですか

みんな寮に入って、起床も食事も全部管理されていた。そうすると練習も、義務なんですよ。サッカーを楽しむっていう心がまったくない。僕が最初に来たときも、「15分前から全員そろってます」っていうからグラウンドに行ったら、長いすに全員座ってるのよね。日本だったら早く着いたらリフティングとか、ボールを触るとかするけど、練習が終わってもみんなで遊んでいる。だけど彼らにとっては義務だから練習はそれなりにやるんだけど、終わったらさーっと帰っていく。


僕は「サッカー始めたときは好きで始めただろ? それを思い出せ。そうでないと絶対にうまくならないよ」って言い続けた。1年半くらいしたら、みんなが残ってキャッキャッてボールを蹴るようになった。


だから入寮を自由にした。サッカーなんて、自己管理ができなかったらできないんだから。「『中国人は違う』というけど、俺はそうは思わない。同じサッカー仲間だから、俺はお前たちを信じる」と言った。


――うまくいきましたか

スタッフから「そんなことしたら、大変なことになる」って言われたけど、本当に大変なことになった。試合前日、試合会場に近いホテルに泊まることにしたら、抜け出して朝まで遊んでいた選手が5人くらいいると報告された。


全員集めて、「俺は信じていたけど、裏切った奴がいたらしい。裏切った奴は俺のところに言いにこい」と伝えたら、コーチから「監督、何を言っているんですか。そんなの言いに来る中国人はいませんよ」と言われた。ところが5人とも来た。みんな泣きながら。だから「俺を裏切ったけど、もう1回だけチャンスをやる。もう1回裏切ったら、絶対に許さない」と伝えた。


ところがその後、一人がまた同じことをやった。「もうお前は二度と来るな。給料全部やる」といってクビにした。そういう事件みたいことが何回もあって、みんなだんだん理解して。


(次ページへ続く)

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