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ニュースの裏側

[第33回]

フリーメイソンの被災地支援 イメージ改善につながるか

宮地ゆう Miyaji Yu(GLOBE記者) 三浦英之 Miura Hideyuki(仙台総局記者・南三陸駐在)

 

東京タワーの足元にあるフリーメイソン日本支部

フリーメイソン日本支部は東京・港区の東京タワーの足元にある。

 

アンブローズが会員が集まる部屋を案内してくれた。全体が青に統一され、地球儀と、星座を描いた天球儀が掲げられた柱をくぐると中央には祭壇がある。

壁にはフリーメイソンの象徴のコンパスと定規の真ん中に、神(God)と幾何学(Geometry)を意味する「G」の文字。儀式が行われる部屋だ。


東京・港区のフリーメイソン日本支部内にある儀式を行う部屋

「フリーメイソンは人格形成をし、兄弟愛を深めるための集まりです。欧州では会員であることは一種のステータス。知らない国に行ってもロッジ(集会所)を訪ねればすぐ仲間になれます」とアンブローズ。

 

会員であることを確かめる特別な方法や、独特な儀式など会員外には明かさない事柄もあるが、支部の案内には「私たちは決して秘密結社ではありません。自分たちの存在と、その会員名を隠していないからです」とある。


分厚い金庫の扉を開け、古い本を出してきてくれた。”Masonry in Japan : The First One Hundred Years 1866 to 1966”(日本のフリーメイソン100年)。

 

日本支部の「歴史」には皇族や政治家の名も

日本支部がまとめたこの本には日本でのフリーメイソンの歴史が詳しく書かれていた。
1853年、ペリーとともに来航した米国人の会員が開いたのが日本での最初の集会とされる。「戦前、日本政府はメイソンを『破壊活動を狙う秘密の団体』と見なして恐れていた」といった記述や、「皇族であり、首相となった東久邇宮稔彦が真の兄弟愛を知るために入会を希望し、儀式の申し込みをした」といった記述もある。


歴代のグランド・マスター(代表)の写真には、何人かの日本人の姿もある。1955年の代表の回想には、当時の首相・鳩山一郎にフリーメイソンの位階を授与した日の記録がある。


「すでに入会していたブラザー(会員間の呼び方)ハトヤマより、メイソンの階級昇格をする儀式の要請があった。儀式は1955年3月26日と決められた。ブラザー・ハトヤマは、体が不自由だったため、自宅で簡略化した形の儀式が行われた」
メイソンの正装した外国人の会員に囲まれ、杖をついて椅子に座った鳩山一郎の写真が添えられている。


アンブローズによればロータリークラブやライオンズクラブ、ボーイスカウトもフリーメイソンから派生してできた団体だという。
「こうした団体は日本でも受け入れられているのに、フリーメイソンだけ変な噂が一人歩きし、誹謗(ひぼう)中傷されてきた。これまでいちいち反論してこなかったが、あまりにひどいので、今後はきちんと我々の姿勢を示していこうということにしました」。その一つが、大震災の被災地支援だったわけだ。


それにしても、フリーメイソンのイメージがここまで悪化したのはなぜか。

『フリーメイソン』(講談社現代新書)などの著作がある名古屋大学名誉教授(ヨーロッパ文化史)の吉村正和は、次のように読み解く。


「かつてのフリーメイソンは啓蒙主義や帝国主義などその時代のイデオロギーを後押しする政治団体だったが、もうその役割は終えている。しかし、メイソンについての正確な情報が少ないうえに、『事実』だけでは面白みがないこともあって、一部のメディアは偏った情報を流し続けてきた。とくに日本では、自律的・自発的な市民の結社の伝統がほとんどないため、フリーメイソンのような団体を理解するのは難しく、無理解や誤解も生じている」


曹洞宗の千葉も「曹洞宗の本部に話を持って行ったら、当初は『秘密結社なんてあぶない』と言われましたよ」と苦笑する。だが、実際に援助を受けるなかで、アンブローズらとも直接知り合い、いまや「フリーメイソンさまさま」という。「これも震災を通じて、お釈迦(しゃか)様が結びつけてくれたご縁。大切にしていきたい」


アンブローズによれば、これまでにもフリーメイソンは様々な慈善活動などを行ってきたが、大きく宣伝することはなかった。「イメージ回復のため、今後はこうした活動は外に出していきたい」という。


被災地の支援については、日本支部は現在、さらに別の寺の再建に資金を出したり、漁船を流された南三陸町の漁師たちに新しい船を贈ったりしている。「一回きりではなく、息の長い支援を続けていくつもりだ」


吉村は「ネットなどの発達で、かつてのような『クラブ』の必要性が薄まったため、フリーメイソンは世界的にも会員が減る傾向にある。被災地支援によるイメージ回復は、会員増につなげる戦略としても理解できる」という。

 

 


 

 

(文中敬称略)

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