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ニュースの裏側

[第22回]

テレビが伝えた震災。現実と影響力の狭間で

一色清 Isshiki Kiyoshi(WEBRONZA編集長・GLOBE記者)

 

テレビは空気を意識しないといけないメディアである。

悲惨なニュースには悲惨なニュースを伝えるいでたちや表情があり、明るいニュースを伝えるときにはそれなりのいでたちや表情がある。そんなことは十分承知していたが、今回の震災ほどはっきりすると、考えさせられるところもなくはなかった。

 

震災後に初めて出演した14日、楽屋につるされていた服は、黒っぽいスーツに白っぽいワイシャツ、濃い色のネクタイ。悲しみを共有するメッセージを込めた装いだった。

 

私の服装はいつも上から下までスタイリストが決めていた。最初の頃は別人になるような恥ずかしさもあったが、ふだん自分では着ることが出来ないおしゃれができる楽しさも感じるようになった。 これまでもその日のニュースによって明るめ暗めなどトーンを変えることはあったが、これほどはっきりしたメッセージの服装は記憶になかった。

 

以後連日、出演者はみな黒っぽい、地味な服装で出続けた。 万を超える人の命が奪われた震災を伝えるのに、それなりの弔意を表す服装で臨むのは当然ではある。でも、長く続けると、結果的に自粛を押しつける空気に加担することになるのではないかとも思った。

 

ただ、「たかが服装されど服装」なのも分かった。

別の番組の女性キャスターは震災翌日に胸元の開いた服を着ていたと週刊誌で批判されていた。日本的と言えば日本的かもしれないが、テレビに映るということは、服装もメッセージ。

世の中の空気にあわせつつ、少しだけ先を行くことがあってもよいくらいの感覚でやるしかないのかなと思った。

 

テレビは瞬発力のメディアである。大きな災害や事件が起こったとき、通常番組を中止して報道特別番組に切り替えるが、この最初の1時間くらいは本当に大変だという。

 

情報は第一報があるだけで、映像もほとんどなく、何もないところから情報や映像が入ってくるまで報じ続けないといけない。そこにその局やキャスターの力が見えるという。

 

3月15日の本番中、スタジオが揺れた。

私の横で古館キャスターが「ただいま、揺れています」と体感を実況し始めた。前日も同じくらいの時刻に大きめの揺れがあり、この日は私たち出演者の足元に白いヘルメットが置かれていた。

 

「頭上にはライトなどがありますので、強い揺れが来たらかぶってください」とスタッフに言われていたが、とてもその余裕はない。胸も少しどきどきする。 1分ほどで揺れは収まり、静岡県が震源で、富士宮で震度6強と分かった。

 

古館キャスターと市川寛子アナウンサーが原稿を読み、スタッフがスタジオと報道局を激しく行き来する。静岡の系列局からの中継が始まるまで、つながないといけない。ぼうぜんとしていた私もわずかながら参加した。

 

古館キャスターが私の方を向いて、「また大きな地震ですね。一色さん」と言うので、私は「先日は長野で、きょうは静岡ということで、あちこちで大きな地震があって関連が分からず心配ですね」と何とか返した。

これが精いっぱいだった。そのうち系列局とつながり、番組終了まで内容を変更してこの地震の被害を伝えた。

 

将来も変わらぬ強み

テレビは悩み多きメディアである。

テレビの力は今も大きい。津波の映像の迫力は活字や写真ではとても伝えられない。

避難所からの中継を見て親族や友人、知人の行方が分かったという感謝の声がテレビ局にたくさん届いてもいた。

新聞や雑誌という紙メディアにはない力をうらやましく思うこともあった。ただこうしたテレビの機能はインターネットが今後かなり肩代わりする面もある。

 

では、将来も変わらないテレビの強みは何か。私は、映像と組み合わさった解説力にあると思う。

現在起こっていること、あるいは今しがた起こったことを映像付きで的確に解説することこそテレビにしかできなくて、テレビの力が最も発揮される場面ではないか。

 

ある報道番組を見ていると、キャスターが強い口調で「東京電力は(記者会見で)国民にわかりやすい言葉で語るべきです」と言っていた。

 

私はふと、国民にわかりやすい言葉で語るのは東京電力の仕事だろうか、それはテレビを含むメディアの仕事なのではないか、と思った。

 

ここまで書いて、天に唾(つば)する結論だと気がついた。

「おまえはどうなんだ」と言われると、小さくなってしまう。でも、テレビ報道はそこに挑戦し続けるしかないと思う。

 

 

(文中敬称略)

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