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ニュースの裏側

[第10回]

前原誠司は、「首相の器」なのか
坂本竜馬を意識する国交相

梶原みずほ Mizuho Kajiwara GLOBE記者

政府内で十分に検討されていない段階で、世の中に発信することを、「政治主導」とみるのか「発言が軽すぎる」とみるのか。コインの裏表のようでもある。
「内閣支持率が高いうちに、懸案の道筋をつけないといけない」という焦りが前原にはあった。政治的な象徴となった八ツ場ダムは「ここで後退すると、鳩山内閣の変革の意思が問われてしまう」と重圧も感じたという。ただ、昨年末までに見直すとしていた空港の特別会計の問題では、財務省との調整ができず話は進んでいない。

官僚の評価はまっ二つに分かれる。
しがらみだらけのダムや航空行政を議論の俎上に載せたことを評価する声は、他省庁を中心に多い。省内でも若手の間には「風通しがよくなり、仕事にスピード感が出ている。やる気もでる」と歓迎する声がある。他方で「テレビカメラの前でぶちあげるだけで、実行力に乏しい」という批判や、「あえて進言したりすると、すぐに記者会見でしゃべられてしまいそうで怖い」と話す官僚もいる。

反小沢という旗印

前原は、民主党幹事長の小沢一郎と距離を置いていることでも知られる。
閣僚になってからも、小沢を批判する発言を繰り返してきた。
小沢の資金管理団体の政治資金規正法違反事件に絡んで「政治資金で不動産を買うべきではない」と主張した。

3月に入って民主党や内閣支持率低下が報じられると、「戦後初めて本格的な政権交代をした歴史的な使命感を持って、当事者がどう判断されるかだ」と、幹事長辞任を暗に促した。
最大の実力者である小沢への反発は、民主党内に常にくすぶっているが、声を上げる政治家はまだ少数派だ。

3月の日経新聞の世論調査で、「今後影響力を発揮してほしいと思う政治家」として、前原は、自民党の舛添要一に続く2位。民主党議員ではトップだった。
党内では政策集団である前原グループ(凌雲会、約20人)を率いる。後見役でもある国家戦略相の仙谷由人も反小沢勢力の旗頭である。
20歳年の離れた小沢と疎遠であることが、いまの前原の存在を高める。
一方で、道路予算の配分を一定の基準に基づいて透明化するといった改革が実現できないのは、小沢とのパイプがないためという指摘もある。

竜馬を形容するときに「飛耳長目」という言葉が使われることがある。
遠くにも耳を傾けて情報を集め、遠く先まで見通す先見力をもって策を練る――。
大臣就任後、前原の「目や耳」となったのは、社民党衆院議員で国交副大臣の辻元清美である。JAL問題での水面下の交渉では、辻元が他省庁の幹部らと接触し、複雑な調整を行った。思想信条に違いはあるが、今では「良いコンビ」と互いを認め合う。小沢と前原との調整は、もう一人の副大臣、馬淵澄夫が担う。

前原と長く行動をともにしてきた民主党議員はいう。
「リスクある言動は、危なっかしいけれど、彼の魅力。落とし穴にはまって、二度と這い上がれないかもしれないし、何度も這い上がってくるのかもしれない。ただ、首相になるには、ときにブレーキをかける助言に、もっと耳を傾けてもいい」
有能なブレーンや調整役が本気で支えるとき、前原は首相の椅子に近づくのだろうか。

(文中敬称略)

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