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世界と日本を考える

[第21回]

オバマを支持する米福音派ロビーの論理 

リチャード・サイジック 米福音派ロビイスト 


米福音派(エヴァンジェリカル)とは、保守的な信仰理解に立つ米国のプロテスタントで、聖書を本当に「神からの言葉」であると信じ、宗教的体験で「回心した(ボーン・アゲイン)」人のことである。こうした信仰を人々と共有し、イエス・キリストに自らの全人生をゆだねる。普通のプロテスタントは、聖書を「神からの言葉」とは考えないし、「回心体験」の必要性を強調しない。

リチャード・サイジック氏

私自身、大学生だった20歳の夏に実家に戻ったとき、教会で「人々の前に出て全身全霊でイエスに従うと言え」という「聖霊なる神の導き」を聞いた。それまでイエスの存在を頭では理解していたが、それ以後、全身全霊で信じるようになった。

福音派は、いわゆる「宗教右派」と同義語ではない。全人口の25~30%といわれる米福音派のうち、「伝統主義者」は約4割で、政治への関与が強い宗教右派はこの中に含まれる。別の約4割は「中道主義者」で、残りの2割が「近代主義者」といった具合に分けられる。私自身は、テーマによって「中道」だったり「伝統」だったりする。

ブッシュ前大統領を含め、歴代の共和党大統領とその側近は、どうやって福音派を動員するか、抜け目なく学んできた。ただ、福音派の票を共和党に与えたことで、最終的に福音派がどこまで恩恵を受けたのか、個人的には疑問に思う。

私が長年務めた全米福音派連盟(NAE、本部ワシントン)の副会長を辞職したきっかけは、私がラジオ番組で「同性カップルに結婚と同様の法的権利を与えるシビル・ユニオン」なら支持できると発言したことだ。「同性愛者婚(ゲイ・マリッジ)」支持とは言っていない。

民主的な社会において、福音派が罪深いとみなすものをすべて違法にすることなどできない。我々と異なる性的指向を持つ人が、「法の下の平等」を持つべきかと聞かれれば、もちろん持つべきだ。
シビル・ユニオンはある意味、妥協的な考えだが、私は「男女間の伝統的な結婚」を守るひとつの方法だと思う。NAEの指導部には受け入れられなかったが、何百万人もの米国人にすれば、異論はないだろう。そのうちの多くは、福音派のキリスト教徒だ。

「神はドアを閉じるとき、窓を開ける」という言葉がある。私はいま、新たな組織「ニュー・エヴァンジェリカルズ」を作ろうとしている。新組織が目指すのは「福音派だけにとってよいこと」ではなく、「だれにとってもよいこと」(コモン・グッド)だ。

福音派は、共和党という一つの政党にあまりにも従属的な存在になってしまった。我々が新たに目指す福音派組織は、同性婚や中絶の反対といった狭いテーマでなく、全体的なテーマを扱う。そのためには特定の政党支援やイデオロギーから独立すべきだ。

これは私がNAEにいたときから進めてきた戦略だ。福音派ロビイストとして様々な法整備を進めたが、その際、個別の問題では我々と立場を異にする人々と協力してきた。「国際的な信教の自由法」(1998年)では、チベット仏教徒やユダヤ教徒、イスラム教徒らと協力したし、「エイズ救済のための大統領緊急計画」(2003年)では、ゲイやレズビアンらと協力した。

(次ページへ続く)

リチャード・サイジック

1951年、米ワシントン州生まれ。
米福音派の有力ロビイスト。同州のキリスト系大学であるウィトワース大(政治学)を経てジョージ・ワシントン大院卒(公共政策)。外交官を目指して台湾留学中に福音伝道師ビリー・グラハムや「積極的思考」で知られるノーマン・V・ピールに会い、神学に傾倒。米最大の福音派組織、全米福音派連盟(NAE)で長年、副会長を務めた。福音派の新組織「ニュー・エヴァンジェリカルズ」代表。同志社大一神教学際研究センター(CISMOR)の招きで1月に来日した。

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