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世界と日本を考える

[第13回]米国の大学街で国境を越えたネットワークをつくる
スイスハウスの試みに日本が学ぶべきこと

菅谷明子 Akiko Sugaya 在米ジャーナリスト


米国・ボストンのハーバード大学のほど近くに、瀟洒(しょうしゃ)なれんが造りの建物がある。通り沿いの大きなガラス越しに、セミナーやレセプションが開かれているのが目にとまる。夜遅くまで、ワイン片手に歓談する人たちもよく見かけた。知のネットワーキングを研究する私にとって、ちょっと気になる存在だった。
ある時、ここがスイスの科学政策の一環として生まれた、世界初の「科学領事館」である「スイスハウス・ボストン」だと知った。スイスハウスは2000年にオープンし、現在は「スイスネックス」と名を変えている。
スイスと米国の大学、研究機関、企業、起業家などを、組織の枠組みを超えてつなぐネットワークの拠点である。

「顔の広さ」で仲介役に

菅谷明子氏

早速、ランチセミナーに参加してみた。講演と質疑応答の後、スタッフは聴衆に、各自が専門分野や関心などを手短に語ることを提案。自己紹介を聞くと「ああ、それなら○○さんの分野に近い。○○さん、手を挙げてみて。彼ですから。ランチの時に、ぜひゆっくり話してみてくださいね」といった具合で、参加者同士をあっという間につなげていく。
ここでは、セミナーで知識を得ることよりも、むしろ、テーマを柱に集まる人々を効果的に交流させ、情報交換を促し、人間関係を発展させる場作りを重視している。
続く立食のランチでも、会場を巡回しながら、「縁結び」に余念がない。ネット時代だからこそ、同じ空間に居合わせ、対面で会話をする意味は大きい。
スタッフがファシリテーター(コミュニケーションを促進する仲介者)の役割を担い、即座にマッチメーキングができる秘密は、彼らの「顔の広さ」にある。
「領事館員」はインターンを含めて約10人。パスカル・マミエール領事は外交官の経験はなく、法律とビジネスが専門だ。副領事は外交畑の出身だが、後は、国際関係を専門にする者など様々だ。
そんな多様な背景を持ったスタッフが、ボストンエリアにあるハーバード大、MIT(マサチューセッツ工科大)や研究機関、ハイテク新規企業などに積極的に出向く。時には関連イベントを共催するなどして、組織やそこに所属する人々の情報収集を徹底的に行いながら、人脈を築いていく。

(次頁に続く)

菅谷明子氏の略歴

「Newsweek」日本版スタッフ、経済産業研究所(RIETI)研究員などを経て現職。コロンビア大大学院修士課程修了(国際関係論、メディア・コミュニケーション専攻)。著書に「メディア・リテラシー」「未来をつくる図書館」(いずれも岩波新書)など。

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