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米大統領選が終わってまもなく、オバマ氏が首席補佐官に指名したラーム・エマニュエル氏は「深刻な危機を決して無駄にすべきではない」と述べた。それ以来、オバマ氏とエマニュエル氏は、金融危機と不況への短期的な対応に追われつつ、これまで米国が取り組むのは不可能とされてきた、長期的な問題に照準を合わせている。

それは、国民皆保険を目指す健康保険制度改革そして米国人の化石燃料の過剰消費を減らすことを狙うエネルギーと環境に関する改革だ。これらの改革が成功して危機が去った暁には、米国はより着実で順調な成長が見込めるだろう。
米国から始まった今回の危機は、日本にも到達し、急激な需要の落ち込みを招いている。
「失われた10年」の後、あまりに早い景気悪化が訪れたことによって、「小泉時代」に行われた数々の改革も、まったく不十分であったか、あるいは的はずれなものであったかが明らかになってしまった。
景気悪化は経済的不安感を増幅させている。とくに、解雇の犠牲になっている若い人々や女性の間では著しい。働く人が自信を取り戻し、消費を増やして、若い人が結婚して家庭を持てるよう、日本は手を打たなくてはならない。
日本のリーダーたちは、目下の危機の短期的な影響への対応に集中するだけでなく、米国でエマニュエル氏がとっている方法を採用することを考えてはどうか。つまり、いままで日本が実現できなかった改革を、この危機を利用して成し遂げることだ。
より広範な改革が迫られているのは、若い人と女性の可能性を制限している労働市場の構造だ。近年の労働市場の改革で、企業は不況時には数を絞ることができるという、より「柔軟な」労働力を得やすくなった。しかし、その結果、労働者が不安定な職から安定した職に移るのはいっそう難しくなってしまった。
よい職 業に就いていた女性が、子供とともに過ごす時間のために職から離れると、元のような職に復帰するのは難しい。育児休業や保育サービスの制度は向上したが、出産後もフルタイムの職にとどまる母親は2割程度にとどまっている。
(次頁に続く)
1962年米国生まれ。北海道江別市で少年時代を過ごす。
米ジョージタウン大卒。
英オックスフォード大で博士号を取得。著書に『「最後の社会主義国」日本の苦闘』(毎日新聞社)など。