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世界と日本を考える

[第4回] 穏健派の弱体化。混迷深い中東

ガザ攻撃で地盤沈下、重み増す米オバマ新政権

 

欠かせぬ米の直接介入

  • 私はイスラエルの総選挙の前後、ワシントンに滞在した。オバマ政権の関係者や国務省の人間と接触を重ね、彼らの中東和平にかける決意と熱意を感じることができた。パレスチナとイスラエルとの和平プロセスを進めるためには、ワシントンの新政権による直接介入が欠かせない。

  • ガザ地域への3週間の攻撃が、約1300人のパレスチナ人の命を奪った末、イスラエル側の一方的な停戦宣言で終わったことも記憶に新しい。しかし、今日に至るまで、エジプトによる仲介の努力にもかかわらず、イスラエル軍は撤退せず、ガザの封鎖も解かれないままで、包括的な停戦は実現していない。

  • エジプトとサウジアラビアをリーダーとするアラブ穏健派は、イスラエルの撤退と、パレスチナによる自治を実現しようと交渉を続けているが、平和的解決は近づいていない。一方のアラブ過激派は、レバノンのヒズボラとパレスチナのハマスという二つの非国家主体が主導し、その背後からシリアとイランが支援する。和平交渉の失敗によって、彼らは勢いづいている。

    パレスチナの中で、ヨルダン川西岸地域のファタハとガザのハマスは、引き続き激しく対立し、お互いを非難し合っている。まるでイスラエルによる武力攻撃とおびただしいパレスチナの民間人の犠牲が、統一のための機運をもたらし、パレスチナとしての戦略的なビジョンを築くには不十分だといわんばかりだ。
    政治的、文化的な影響力から、アラブ諸国の中で重要な役割を果たしてきたエジプトは、ファタハとハマスの和解促進に失敗した。アラブ穏健派諸国の政府は、交渉当事者としての能力を失いつつある。

    ハマスは昨年12月、停戦延長を拒否するという明らかな戦略的失敗を犯し、イスラエルにガザ攻撃の口実を与えた。ただし、6カ月続いた停戦中も、ガザの封鎖が解かれることはなく、人々の生活水準はさらに悪化していった。ハマスはエジプトの中立性に疑問を抱き、「エジプトはファタハとイスラエル寄りだ」と確信していった。イスラエルのリブニ外相が攻撃開始の2日前にエジプトを訪問していたことも、この見方に拍車をかけた。

日欧ロへの期待

エジプト国内はもとより、アラブ地域の世論は、エジプト政府の立場とムバラク大統領に批判的になっている。モロッコやレバノン、シリアといったアラブ各国の首都で、エジプト政府とイスラエルを同列にみなして非難するメッセージを発する大規模なデモが起きている。エジプト政府の公式な方針と、この地域の世論がこれほどかけ離れることは前例がないことだ。
アラブ穏健派の「中立的な仲介者」としてのイメージは傷つき、立場が崩れた。そのことで、相対的に中東和平における米国の重要性がさらに高まっているといえる。

米国に加えて、世界のほかの大国もアラブ・イスラエル紛争の解決を探るために、責任を担う必要がある。ヨーロッパ各国とロシア、そして日本は、それぞれが持つ、イスラエル、パレスチナ、アラブ諸国との関係を活用し、仲介を進めることができるはずだ。
またガザの再建と、ヨルダン川西岸の社会的、経済的向上に向けて、欧州各国や日本が果たすべき役割は大きい。政治的な問題だけでなく、社会的、経済的な側面にも光を当て、生活水準を高めるためのアプローチでは、ヨーロッパと日本が最もふさわしい資質を備えている。

2008年の9月、私は、東京外国語大学の酒井啓子教授らの招きで、はじめて日本を訪れた。
日本人は、平和を愛し、世界の事情に関心が高いと聞いていたが、実際に、中東情勢に強い関心を持っている日本人の多さを実感できた。
ただ、そうした関心は持続されなければならない。世論へと昇華されていくことが重要だ。そうすることで、日本政府の外交政策や援助計画が、中東の平和実現にどれだけ貢献できるかを左右するからだ。

 

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