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最近フランスで出版した『危機、そして』で、私はグローバル化時代で初めてとなる金融危機の到来を予想し、その対処法を示した。ただ、その危機が来るのは10年後だろうと思っていた。現在の経済システムがもう少し持ちこたえるだろうと信じていた。
危機が今訪れたのは、私たちの想像よりずっと速く物事が進んでいることを示している。それは、経済システムの均衡が大きく崩れていたからだ。ただ、もしこの危機が予想通り10年後だったら、矛盾が蓄積してもっと大変なことになっていた。今だから、まだましだったといえる。
危機の原因は、米国社会が中産階級に十分な賃金を与えられなかったことにある。彼らの負債がかさみ、借金を抱えたまま経済成長が続いたあげく、信用の喪失を招いた。ただ、これで米国が一気に坂を転げ落ちるとは思えない。というより、危機を乗り越えるのでないか。カギは、ドルが信頼を維持できるかどうかだ。
オバマ新大統領の役割が決定的だ。彼が米国だけを考えるか、世界を考えるか。世界を考えるなら、ドルの安定を目指すだろう。しかし、自国優先でインフレを起こして問題を解決しようとすれば、ドルの信用に疑問を持たれ、非常に危険な状態となる。(次頁に続く)
ジャック・アタリ Jacques Attali 思想家
1943年、アルジェ生まれ。仏国立行政学院卒。ミッテラン政権で大統領特別顧問。大統領の知恵袋と言われた。欧州復興開発銀行の初代総裁。サルコジ政権では構造改革のための諮問委委員長に。経済学者、小説家、文明評論家としても知られ、途上国支援にも尽力している。06年の『21世紀の歴史』では、今世紀の世界の行く末を大胆に予言。日本の核武装や国家の解体などの可能性を指摘した。