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新聞記者に内部告発したことを理由に解雇されたとしてメリーランド州ボルティモア市の警察官が警察本部長らを相手に起こした訴訟の二審で、第4巡回区控訴裁判所のハービィ・ウィルキンソン判事は4月2日、「公務員の不正を明らかにするのに不可欠な調査報道は、手間ひまがかかるために、そうでなくてもぜいたくだとみられているが、この難しい時期、ますます減らされており、官僚機構に対する監視はたいへん難しくなっている」と指摘。警察官敗訴の一審判決を覆して、審理を地裁に差し戻した。「悲しいことに、足で稼ぐ記者が減れば減るほど、記者に情報を提供する内部の情報源はますます大事になる」というのが内部告発者保護の判断の理由だった。
ジャーナリストの間にも、国家権力の側に行動を求める意見がある。
クロンカイト記者の後任のキャスターを24年間にわたって務めたダン・ラザー記者はこの夏、ワシントン・ポスト紙への投稿などで、アメリカのメディアの危険な状況に焦点をあてて解決策を探る委員会を設けるようオバマ大統領に呼びかけた。オバマ大統領を引っ張り出すことで、その議論が夕方のテレビニュースでも報じられ、世の中の注目を集められるというのがラザー記者の狙いだ。

元新聞記者で今はテレビ番組の制作に携わるデービッド・サイモン氏は、多くの新聞社が業界として現状打開の策を相談できるように独占禁止法を改めるべきだと議会に求めた。インターネット上で他のサイトに記事を流用されないようにするための著作権保護と、ネット上で記事の閲覧に課金する仕組みへの移行について、いわば業界ぐるみのカルテルを結べるように立法してほしいという提案だ。
権力を監視し、場合によってはその不正を暴くのがジャーナリズムの役割の一つであり、それは民主主義にとって不可欠だから、今後も維持していく必要がある。そうした問題意識が底に流れている。
「新聞のない政府か、政府のない新聞か、いずれかを選べと言われれば、私は、一瞬のちゅうちょもなく、後者を選ぶべきだろう」
独立宣言を起草し、のちに第3代大統領になった建国の父、トーマス・ジェファーソンの書き残した言葉は、オバマ大統領も引用し、「活力あるタフなメディアのない政府は合衆国の選択肢にはない」と続けた。ただし、ここで言う「新聞」の意味が、紙の新聞だけではなく、ネット上のオンラインメディアを含めたジャーナリズム全体にある、ということでも、ほぼすべての論者が一致する。技術の進歩でオンラインメディアが花開けば、たとえ新聞やテレビなど既存メディアが衰退したとしても、報道の質と量はより豊かとなり、「ジャーナリズムはこれから黄金の日々を迎える」(オバマ大統領)という可能性も十分にある。
とはいえ、今のところ、実際に現場で取材し、事実を発掘するのは、オンラインメディアではなく、新聞紙の記者であることが多いのも事実だ。そして、その記者が減っており、そこに権力監視の空隙が生じている。カーディン上院議員も、ウィルキンソン判事も、オバマ大統領も、その見解でほぼ一致しているようにみえる。そんな過渡期だからこそ、「公共情報の需要と供給に関する国家戦略が必要だ」(ブルッキングス研究所のダレル・ウエスト副所長)と考えられ、そのための議論が国家レベルで続いている。
オバマ大統領は5月9日、ホワイトハウス担当記者らを前に述べた。「あなたたちが我々(政府)に説明責任を果たさせ、正直であることを求め、我々が安易に流れることを防ぎ、ひいては人々のために、我々がよりよく仕事をできるように助けてくれている」。そして付け加えた。「そうした報道は保護に値する(worth preserving)。それは、あなたたち(記者たち)のためだけではなく、すべての人々(the public)のために」