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メディア最前線

[第8回] メディアラボから未来を発信
異分野の融合が「競創」力に

石井裕 Hiroshi Ishii MITメディアラボ副所長

 

メディアラボ新研究棟の完成模型(上)。今秋の完成めざし工事が進む(いずれもMITメディアラボ提供)

米国東海岸にあるマサチューセッツ工科大学(MIT)のキャンパスでいま、日本人建築家槇文彦氏のデザインによる、メディアラボの新しい研究棟の建設が急ピッチで進んでいる。今秋の完成をめざす6階建ての透明感にあふれるビルは、来年25周年を迎えるメディアラボの新しい顔として、知的創造のためのアイデアの孵化場としてのデビューを待っている。

メディアラボは1985年、初代所長を務めたニコラス・ネグロポンテ教授が、当時のMIT学長のジェローム・ウイーズナ氏とともに設立した未来志向の研究機関である。「未来を予言する最良の方法は、自らの手で未来を発明することだ」というアラン・ケイ博士の言葉を実践する研究所として、デジタル化など新しい技術がもたらすメディアの未来を可視化する研究で、世界をリードしてきた。

さわれるデジタル情報

90年代半ばからスタートした「考えるものたち(Things that think)」は、その代表例となるプロジェクトである。私たちの周りにあるモノや環境のなかに、コンピューターや通信の機能を埋め込み、物理空間と融合した、新しいハイブリッドな情報空間を生み出すことを目標とする。

私が進めてきた「タンジブルビット」も、この試みのひとつといえる。日本語に訳せば「手に取ったり、触れたりできるデジタル情報」だろうか。ちょうどそろばんが10進数という情報をそろばんの珠とその相互的位置関係で示すように、情報そのものに物理的「形」を与え、その内容が一目でわかり、かつ触れてその存在を確認できることをめざしている。

photo : NTT ICC

たとえば「ミュージックボトル」は、ガラス製のボトルをデジタル情報の「容器」に用い、ふたの開け閉めで、音楽を奏でたり、光が明滅したりする(写真 右)。小瓶のふたを開け、小鳥のさえずりが聞こえれば天気は晴れ、雨の音が聞こえてくれば雨天といったように、様々な使い方ができる。

トポボ」という子供のためのロボット作成キットでは、多様な形状の「ブロック」に運動記憶機能を持たせ、組み上げた「ブロック」を手で動かすと、その動きを記憶して再現できる。その機能により、ロボットに複雑な動作を簡単な直接操作で教えることが可能になる。

絵筆のブラシの中にカメラの機能をもたせた「I/Oブラシ」は、筆先でなぞったモノの色や模様を読み取り、その色彩や形を「絵の具」にして、キャンバス上に 自在に写し取って絵を描くことができる。物理世界をパレットに変えてしまおうという発想でデザインされた芸術表現のツールである。

(次頁へ続く)

石井裕(いしい・ひろし)氏の略歴

 

photo : Webb Chappell
 

1956年生まれ。
北海道大学大学院修了。
日本電信電話公社(現NTT)に入社し、ヒューマンインターフェースと遠隔コラボレーション技術の研究に従事、95年にMITメディアラボに移り、デジタル情報の直接操作・感知可能なタンジブルユーザーインターフェースの研究を進める。
MITメディアラボ副所長および教授 http://www.media.mit.edu/
Things That Think Consortium(「考えるものたち」コンソーシアム)共同ディレクター http://ttt.media.mit.edu/
タンジブルメディアグループ・ヘッド http://tangible.media.mit.edu/

 

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