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ロッシェル・カップ 米国シリコンバレー在住
ビンラディン暗殺の報にアメリカ社会は沸きたったが、アメリカ先住民だけはいらだちを隠せない様子だった。ビンラディンを狙った軍事作戦で、彼のコードネームに先住民たちの尊敬すべきリーダー「ジェロニモ」の名前が使われたことを、許し難い侮辱と受けとめたからだ。
怒った先住民の代表者は、米国政府にcry foul(違反だと叫ぶ)した。
アメリカ先住民の呼び方は、Native AmericansやAmerican Indiansが公正とされるが、この見出しのようにIndiansも、まだ広く使われている。Cry foulは元はスポーツ用語で、審判に相手のルール違反を訴える意味だった。
ジェロニモは1829年の生まれ。いまのアリゾナ州付近に暮らしていた先住民アパッチ族のリーダーだった。自分の家族を殺したメキシコ軍への復讐を誓い、各支族から戦士を募り、メキシコやアメリカへの攻撃を先導。捕らわれても何度も脱出に成功し、勇敢な戦士として広く名が知られた。
米国では、スポーツのチーム名やマスコットに、先住民を連想させる名前や姿を使う例が多い。プロ野球のCleveland IndiansやプロフットボールのWashington Redskinsなどだ。
「強くて勇敢な戦士」というイメージがあるからだが、敬意を払っているようで、ステレオタイプに押し込めている側面も強い。
clownish(こっけい)なマスコットは、先住民にとって「侮辱的なカリカチュア」であり、「人種差別である」として抗議の対象になっている。 こうした背景を考えると、米国の敵を指すコードネームに尊敬するリーダーの名を使われ、先住民たちが怒るのも無理はない。
ある先住民の代表者はunpardonable slander(容赦できない中傷)だと話した。
メディアでも論争が続いた。5月10日付Los Angeles Timesの社説はOperation Geronimo dishonors the Indian leaderの見出しで、ビンラディンとジェロニモを比較することはmisguided(見当違い)と批判した。
一方、5月8日付のChicago Tribuneの「What bin Laden, Geronimo shared」では黒人コラムニストのClarence Pageが、2人はde-centralized organizational structure(中央集権的でない組織)のカリスマ的リーダーで、自らより強大な軍隊をstymied(窮地に立たせた)したといった共通点もあると指摘。
今回コードネームにしたのは、ジェロニモのリーダーシップへのsalute(敬礼)だったのではないかと結論付けて話題を呼んだ。
人事管理と異文化理解が専門のコンサルタント。シカゴ大経営大学院卒。日本語に堪能。ビジネス英語を中心に著書多数。