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「完食できる量を注文すること。地球に感謝しながら食事を楽しむこと。お皿には何も残さないでください」。入り口にこんな貼り紙を掲げたシドニーの小さな和食店が、世界各国のマスコミに取り上げられ、環境問題に敏感な人たちから注目を集めている。
一人でキッチンを切りもりするオーナーシェフの市川友佳子さんは、今日も新規の客を追い返している。「貼り紙のルールは読んでいただけましたか?メンバーと一緒に来られない3名以上の新規の方はお断りしています」。電話で何度もかけてくる人には「私の時間の無駄です」と、ぴしゃり。それでも、市川ファンは後を絶たない。
店の名前は「Wafu(ワフー)」。3年半前のオープン時から、オーガニック食材を使ったヘルシーな家庭料理を一人20豪ドル(約1570円)程度と、リーズナブルな価格で提供している。グルテン、白砂糖や卵・乳製品を一切使わない料理は、食事制限中の患者やアレルギーに悩む人に受け、口コミで人気化した。月曜は肉類は一切、出さない。「二酸化炭素排出の元になるから」という。
だが、シドニー有力紙のレストラン欄に去年の末に掲載された途端に客層が変わり、市川さんは完食をしない客にうんざりしていた。そこで、思い立ったのが貼り紙だ。完食者には、毎回会計が3割引きになり、いつでも予約を入れることができるメンバー登録権を与えた。
登録者制にしたら、ごみの量が一気に減った。食事を残す人が週に2組程度ということもあるが、魚の骨や肉の脂身以外の残飯は、客の一人が飼っている鶏の餌として持ち帰ってくれるのだ。その結果、今まで60リットルのゴミ箱が毎日埋まっていたのが、現在はなんと手のひらサイズになった。「地球の一部では食糧不足で人々が亡くなっているにも関わらず、どこかで他人事な私たちが立ち止まるきっかけになったら」と市川さんはいう。
有名店を築きたいという願望はない。「極度のアレルギー患者も食べにきてくれていることを考えたら、調理法はあいまいにできない」という自分に厳しい性格からか、若い見習いシェフは次々と辞めていく。でも、「メンバー制にしてから昔の客が喜ぶ顔を見られるのがうれしい」という。続々とやってくる新規の客に対しては、ルールを理解していないと感じたら、日本人の元夫が経営する「近所の和食店に行くように指示する」そうだ。
(ギャニベイ阿希子=シドニー在住)
[2010.08.24]