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世界の食を訪ねて

あの日の新宿から10年 英国一家、日本を愛す

[第22回]マイケル・ブースの世界を食べる

Photo:Toyama Toshiki



1年ほど前に米国大統領になったあの人がよく使う言い回し「偉大な国」。ブースさんは今回、あえてこの表現で自らの日本への愛と敬意を綴ります。



みなさん、おめでとうございます。私たちは今年、ともに記念すべき10周年を迎えます。このコラムの読者と筆者として、ということじゃありません(あくまでもそう見えるだけです)。若かりし私たち一家がみなさん方の偉大なる国、日本を初めて訪れたのが、かれこれ10年前なのです。ありがたいことにこの10年、日本のあらゆるものに対する憧れは増すばかりでした(ただし納豆は別……。あの味だけは一生わからないでしょうが)。


さかのぼれば当時、私たち(少なくとも私自身)は本を書くためにやってきた。妻と息子たちは単に冒険気分だったことだろう。北海道から沖縄まで、日本を端から端まで旅してきたが、その中で目を見張るような体験にいくつも出くわしてきた。力士とランチをしたり、震える手で巨大なカニをつかんだり、SMAPと対面したり。懐石料理を味わったのも初めてだったし、沖縄・大宜味村では元気に長生きしている人たちから100年生きる秘訣も教わった。


しかしその何年後かには、それだけではまだ足りないとでもいうように、不思議な事態が起きた。私の著書の一冊、『英国一家、日本を食べる』が日本語に翻訳され、ベストセラーとなったのだ。さらにおかしなことに、NHKの連続アニメにまでなり、そして発行から10年経った今月、同作としては初めてノーカットの完全版として出版されることになった。ずいぶん前から、そうなればいいなと願い続けてきたことだ。


10年前、日本料理は危機的な状況にあると聞いていた。若者は厨房に入る仕事を選びたがらず、すしや天ぷら、懐石料理をつくるための技術を何年もかけて学ぶほどの忍耐力もない。その間に日本の食生活は、糖質と脂肪たっぷりのハンバーガーやピザ、パスタといった欧米流の手軽なファストフードを求めるようになっていた。伝統的な日本食の、繊細であいまいな味わいをさしおいて。おそらく、当時の私は自分に言い聞かせていたことだろう。この旅が、各地に根付いた本当の日本を味わう「ラストチャンス」になるだろうと。



(次ページへ続く)

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