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世界の食を訪ねて

あの日の新宿から10年 英国一家、日本を愛す

[第22回]マイケル・ブースの世界を食べる



日本をめぐって見えたもの


そして10年がたち、私は新しい本のために、家族とともに日本をめぐる旅をもう一度した。3月にはその日本語版も出版される。それにしても、日本料理の絶滅が迫っているというあの警告が現実のものにならなくてよかった。確かにハンバーガーやピザの店はこれまでで一番多いかもしれないが、九州でも四国でも、長野でも大阪でも北海道の端であっても、日本食の現場はこれまでになく勢いがあるということを、行く先々で私は見てきた。


実にたくさんの若者たちが、一世代前の料理人と同じように見事な料理を作っている。すばらしい食材を育て、最大限の愛とリスペクトをもって消費者に届けることに打ち込んでいるのだ。そこには、過去に敬意を表すというよりも彼らなりのやり方で、ひたすら熱心に勤勉に、鍛錬を重ねる若者の姿があった。


「みなさん方の偉大なる国」。今回のコラムの冒頭で私はそう書いた。近ごろは、ホワイトハウスに暮らす、やたら血色のいいおしゃべりおじさんのおかげで、こういう言い回しは空っぽで無意味に感じられてしまうが、あくまでも本心である。日本はクレイジーな扇動家に「再び偉大に」してもらうまでもないし、イギリスのようにわざわざ「偉大」を名乗る必要もない(「グレート・ブリテン」は自分を大きく見せるためというわけでなく地理的な呼び方だが、多くのブレグジット派たちは誤解し続けている)。日本はそのままで、じゅうぶん偉大だ。自信が持てるような言葉が何か必要なら、若かりし頃のあの一家にちょっと聞いてみればいい。2008年のある美しい夏の夜、驚きと恍惚に目をぱちくりさせながら東京メトロ新宿駅に降り立ち、日本に恋に落ちたあの一家に。


(訳・菴原みなと)



Michael Booth

英国・サセックス生まれ。ジャーナリスト。著書に『英国一家、日本を食べる』(書籍、コミックとも亜紀書房)、『英国一家、フランスを食べる』(飛鳥新社)、『限りなく完璧に近い人々―なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?』(KADOKAWA)など。近著に『ありのままのアンデルセン』(晶文社)。妻リスン、息子アスガーとエミルと共にデンマーク在住。

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