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世界の食を訪ねて

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「くら寿司」vs「サムライ寿司」

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第44回]

研修生たちが考えた「サムライ寿司」です


いままで「日本人が好きな食べ物を、カンボジア人が好きだとは限らない」ということで、日本人が好きだけどカンボジア人が嫌いな食べ物、カンボジア人が好きだけど日本人が嫌いな食べ物を紹介してきました。


海外で商売をするときには、このような違いを踏まえて、徹底的に顧客調査をすることが大切です。

しかし、これは海外で商売をするときだけなのでしょうか?


私はよく「日本人の9割はカレーが好きだから、自分がおいしいと思うカレーを出せば商売になる」と言っていますが、逆に言えば1割くらいはカレーが好きでない人もいます。



家族全員で食事に行こうとする時、家族の中に1人でもカレー嫌いがいれば、「カレーしか売っていないカレー専門店」には行けないわけです。


このような傾向がさらに顕著になるのが寿司です。

日本人の中にも、生魚が嫌いな人、わさびが嫌いな人、酢飯が嫌いな人はたくさんいます。

小さなこだわりの寿司屋なら、そういう人は顧客対象から外し、寿司好きだけが集まる店にしても問題はありません。


しかし、ファミリーを対象にした寿司屋であれば、「生魚が嫌い率」「わさびが嫌い率」の高い子供たちでも喜ぶものを出さなければ、商売になりません。


東京で「くら寿司」という回転寿司チェーン店に行ってみると、衝撃的なものが流れていました。

それは、「旨ダレ牛カルビ」。



これは……まさに、サムライカレーで研修生たちがカンボジア人向けに考えた「サムライ寿司」と同じものではないか!?(*冒頭の写真です)



過去の回で書いたように、サムライカレーでは、酢飯が嫌い、カニかまに違和感があるカンボジアの人に喜んでもらう寿司をつくるために、ご飯に肉を巻いたモノをサムライ寿司という名前で売りました。そして、それは大好評でした。



この、くら寿司の「旨だれ牛カルビ」も、生魚が苦手な子供に好評のようで、隣に座っていた小さな兄弟が競い合うようにして取っていました。


くら寿司では、これ以外にもハンバーグや、チキン南蛮カツなど、従来の寿司のイメージを打ち破った斬新なモノが次々と流れています。


さらに、寿司以外のものを食べたい人向けに、カレーや、うどん、うな丼、ラーメンなども取り扱っています。

カレーも回ります


「くら寿司」と名乗りつつも、実際には回転寿司システムを利用したファミリーレストランと化しているわけです。


今ではすっかりメジャーになったツナサラダ寿司なども、出始めの頃は「邪道」と言われていました。

ツナサラダ寿司


しかし、ビジネスをやっていく上で重要なのは顧客のニーズであり、顧客が求めるモノを、既成の概念を取っ払ってどんどん出していくスタイルは非常にすばらしいと思います。


我々は、日本人顧客を対象にせず、外国人、主にカンボジア人を対象にモノを売っているので、既成概念から外れても誰も疑問に思いません。

それ故に、夏休み・春休みにインターンシップとしてやってくる大学生たちの若い発想で、どんどんはっちゃけたものを販売していくことができます。


これを、同調圧力の強い、うるさ型の人の多い日本国内でやりとげ、対象としているファミリーの顧客を喜ばせているくら寿司は、本当にすばらしいと思います。

顧客のニーズにあわせメニューは日々変化する


世の中には、「自分たちの提供するモノがベストである。顧客がこれを好きになるように導くのが我々のミッションである」という商売と、「顧客の求めるモノが、我々が提供すべきモノである。我々が何を提供すべきか、徹底的に顧客調査をするのが我々のミッションである」という商売があります。


これは、どちらがいい悪いというモノではなく、別の商売であるということです。

我々は、カンボジアで、徹底的に後者にかじを切って商売をしてきたわけですが、日本で同じ方向にかじを切り、同じ「肉寿司」にたどり着いたくら寿司で、我々の店とは桁違いの人数の顧客が喜んでいる姿をみると、この方向でもっと精進せねばと強く思うのです。




(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第24回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第25回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

第26回:「中華料理屋は世界のオアシスである。異論は認める」

第27回:「出張、サムライカレー!カンボジアのカレーを日本人に受けるようにカスタマイズしてみた!」

第28回:「カンボジアのカレーは福岡のサッカースタジアムで売れなかった! 顧客志向の大切さを改めて考える」

第29回:参入障壁の低さは過当競争を招く 激烈!カンボジアレストラン事情

第30回:東南アジアで食器を消毒する方法

第31回:あなたの訪れたインド料理屋の店員もネパール人かも

第32回:極私的 一番刺激的で、一番不味かった国、キューバ。

第33回:アジアの空港ラウンジに見る、「おもてなし」事情

第34回:ベトナム人に有名な日本人「ドレーモン」

第35回:年に3回お正月があるカンボジア。正月料理は、カレー?

第36回:極彩色が好きだけど、彩りは不要? カンボジア人の野菜の好み

第37回: 路上で豚の丸焼き、生バンドコンサート! カンボジアの結婚式は派手なんです!

第38回:カンボジアでも大人気? LINEのクマは神出鬼没

第39回:激烈! プノンペンコーヒー戦争!

第40回:時代はCafeもAmazon? 続・プノンペンコーヒ戦争!

第41回:カンボジアのバレンタインの主役は、クマ! チョコレートはどこへいった?

第42回:カンボジア人に寿司を売れ! 言葉を使わないコミュニケーションで好みを探れ!

第43回:カンボジア人が大好きな麺料理、日本人には衝撃の味だった!

第44回:カンボジアの映画館ではなぜ7.5ドルのポップコーンセットが売れるのか?

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