RSS

世界の食を訪ねて

カンボジアの映画館ではなぜ7.5ドルのポップコーンセットが売れるのか?

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第44回]



私は、いろんな国に旅行に行くときに、映画館で映画を見るのが好きです。

映画館にはその国のお国柄が出ることが多く、さらにその映画館で映画を見ている人にそのお国柄が大きくあらわれるのです。


アメリカだと、映画の中で盛り上がるところで歓声が起きたりしますし、

インドだと、席を離れて歌ったり踊ったりしちゃいます。


日本では、咳をするのもはばかられるとか、スマホの画面で明るくなると不愉快とか、エンドロールは最後まで見ろとか、細かいことをやたら気にするのが実にお国柄ですね。


さて、我らがカンボジアの映画はどうでしょうか?

ものすごくぼろっちいものを想像していませんか?


カンボジアの映画館は、こんなです。



はい。日本のシネマコンプレックスと、まったく変わりありません。

最新の4DX(席が揺れたり、風がきたり)の映画館もあります。



サムライカレープロジェクトで来た学生たちがプノンペンの街を歩き回って「ここ、うちの実家よりも都会だわ……」という理由がここにあります。


これは、イオンだけだろーと言われそうですが、ここ以外にも同じレベルの映画館はあります。しかもお値段は、平日昼だと普通の映画はたったの4ドル。日本ではふつう3000円以上する4DXでも10ドル。


ちなみに、2017年3月6日時点で一押しは、エマ・ワトソン主演の「美女と野獣」。

公開日が3月16日なので、4月21日公開の日本よりも1月以上早いです。

全米公開も3月17日なのですが……。


「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」も日本や米国とほぼ同時のタイミングで公開されていました。


このように、最新の映画が最新の設備で公開されているプノンペンの映画館。

せっかくなので、ここでカンボジアローカルの映画を見てみましょう。


私が選んだのは、異例のロングランを続けているカンボジア映画「ザ・マミー」。


もう、見るからにB級ローカル色が強くて、最高です。


私がまったく理解できないクメール語でいろいろやっているんですが、それでも何が起こっているか分かるレベルにストーリーは単純明快で、ギャグは分かりやすいです。

そして、十年以上ぶりにキョンシーを観ました。なつかしい……。


プノンペンで珍しいモノ(今回はオバケ)を見つけてきて、田舎でそれを使って大道芸をする様子や、街のオープンエアのレストランでダラダラと飯を食っている様子は、実にカンボジア的で、ああ、こういう風景あるよなーと思えてすばらしいです。


この大道芸に、結構みんながバンバンお金を払うのもカンボジア的。

カンボジアの人たちは、収入も少ないし、実際なかなかモノを買ってくれません。

しかし、テンションが上がると結構お金を使ってくれるのです。



映画の値段が4ドルなのに、ポップコーン+コーラ2杯の値段は、7.5ドル。


映画館の中に入ると、このポップコーンを結構みんな持っているのです。


おい!それは、君たちの朝ご飯4食分だぞ!とか、ポップコーンは1階のスーパーでは1ドル以下で売ってるぞ!とか思うのですが、お構いなし。祭りになるとバンバンお金を使うのです。


この気質は、他にもいろんなところで見てとれます。

例えば、プノンペンの街では道ばたでよくビールを飲んでいます。そこに外国人が近づいていくと「おー、一緒に飲んでけ!」みたいな感じで、ガンガンビールをおごってくれます。


また、カンボジアのお祭りでも、モノは高く売れます。

店では0.5ドルでしか売れないわたあめも、お祭りの会場では1ドルでも飛ぶようにうれ、1.25ドル、1.5ドルと上げていっても結構売れます。



日本でも、ふだんだったら絶対買わないわたあめを、初詣やお祭りの時には500円とか出して買ったりもするので、こちら特有のものではありませんが、カンボジアではそれが顕著です。

なので、カンボジアでカンボジア人にモノを売るときに常に考えておいた方がいいのが、この非日常感をどうやって醸し出していくかということです。


われわれの研修生が生み出した、

「わたあめという食べものを売るのではない。『わたあめを作る』という体験を売るのだ」

という言葉が、的を射ているなと思うのもこういうところです。楽しい体験をしてもらい、その対価としてモノを売る。それは映画の入場料でも、ポップコーンでも、わたあめでもいいんです。


ちなみに、この映画館ではごくまれに日本の映画も上映されます。

が、油断して見に行くと、クメール語吹き替えです。

アメリカ映画はほぼ全て、英語音声クメール語字幕なのですが、なぜか日本映画はクメール語音声のみ。


以前、進撃の巨人を観に言って、大変悲しい思いをしました・・・



(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第24回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第25回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

第26回:「中華料理屋は世界のオアシスである。異論は認める」

第27回:「出張、サムライカレー!カンボジアのカレーを日本人に受けるようにカスタマイズしてみた!」

第28回:「カンボジアのカレーは福岡のサッカースタジアムで売れなかった! 顧客志向の大切さを改めて考える」

第29回:参入障壁の低さは過当競争を招く 激烈!カンボジアレストラン事情

第30回:東南アジアで食器を消毒する方法

第31回:あなたの訪れたインド料理屋の店員もネパール人かも

第32回:極私的 一番刺激的で、一番不味かった国、キューバ。

第33回:アジアの空港ラウンジに見る、「おもてなし」事情

第34回:ベトナム人に有名な日本人「ドレーモン」

第35回:年に3回お正月があるカンボジア。正月料理は、カレー?

第36回:極彩色が好きだけど、彩りは不要? カンボジア人の野菜の好み

第37回: 路上で豚の丸焼き、生バンドコンサート! カンボジアの結婚式は派手なんです!

第38回:カンボジアでも大人気? LINEのクマは神出鬼没

第39回:激烈! プノンペンコーヒー戦争!

第40回:時代はCafeもAmazon? 続・プノンペンコーヒ戦争!

第41回:カンボジアのバレンタインの主役は、クマ! チョコレートはどこへいった?

第42回:カンボジア人に寿司を売れ! 言葉を使わないコミュニケーションで好みを探れ!

第43回:カンボジア人が大好きな麺料理、日本人には衝撃の味だった!

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

Popular article | 人気記事

さらに記事を見る
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示