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世界の食を訪ねて

時代はCafeもAmazon? 続・プノンペンコーヒー戦争!

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第40回]




先日、サムライカレーから至近距離に、ものすごく綺麗なカフェがオープンしました。

DELIKAT GELATOというアイスクリームを中心に、ケーキ屋ドリンクを提供するカフェです。

開放的な店内


未開の地とおもわれていたカンボジア・プノンペン。実際に、私がはじめてきた3年前にはこんな店はありませんでした。

可愛らしいケーキ


しかし、2017年のプノンペンには、こんな先進国的な店が次々とでき、とある理由で、カンボジア人も訪れることができるようになりました。今回は、こういう高級なカフェのお話です。


カンボジアのカフェは、大きく分けて3つの階層にわかれます。

前回の記事で紹介したカンボジアの庶民の屋台のコーヒーがレベル1とすると、その上レベル2のカフェはこんな感じです。



屋台ではないのですが、日本ではあり得ないレベルの清潔感のなさと内装。一番の特徴は、大きなテレビと、それに向かって映画館のように並べられたデッキチェアです。


カンボジアではまだテレビがない家も多く、カンボジアの庶民は、このようなカフェで映画やスポーツを観て楽しんでいるのです。


さながら、街頭テレビ。


観ているのは、力道山のプロレスではなく、アメリカの総合格闘技UFCだったりしますが。

この庶民レベルの店でのコーヒーは1ドル(110円)程度で、0.5ドル(55円)程度の屋台のコーヒーよりはちょっと高くなっています。


そして、レベル3のカフェは、冒頭に登場したDELIKAT GELATOを含む、先進国にもありそうな綺麗なカフェ。


その代表的なものは、世界中でおなじみ、スターバックス。



こちらのコーヒーのお値段は、日本と大差ない3-4ドル(330-440円)です。


店の中も、先進国クオリティで、我々外国人が行っても実に落ち着く空間。

お金持ちそうなカンボジア人の大学生がPCでなにかをしてたり、楽しそうにおしゃべりをしてたりします。


このスターバックスレベルのカフェは、市内に次々とできています。

今までビザの更新などでお世話になっていた旅行代理店が潰れた跡地にできた、Coffee Today



全然お客さんが入っていない高級マッサージ屋の目の前にもう一件高級マッサージ屋ができて、案の定3ヶ月で倒産。その跡地にできたRiders Cafe(文字通り店内にバイクがディスプレイされています)



何かが潰れると、その跡地にすぐカフェができる状況です。


そんな、高級カフェ。ほとんどが全然お客さんが入っていない負け組なのですが、最近人気のチェーン店があります。それが、Cafe Amazon


「パクリ大好きカンボジア人が、Amazonもパクったー!」とかいっていたのですが、みるみるうちに店舗が増えていきあっというまに市場を席巻しております。


このCafe Amazon。もちろん、アメリカ発のインターネット通販のAmazonとは全く関係ありません。実は、タイの会社で、運営しているのはタイ石油公社。ガソリンスタンド併設のカフェとして大きくなり、カンボジアにも進出してきたようです。



プノンペン市内だけではなく、シェムリアップ、シアヌークビル、コンボンチュナンなど、日本ではまるで知られてないような都市まで出店しています。


そんなCafe Amazonがプノンペンのイオンモールの中にも出店したのですが、これが連日の人だかり。1階のスターバックスがガラガラなのに、3階のCafe Amazonは人だかりなんてこともあります。その人気の秘密を、Cafe Amazonにいるカンボジア人に聞いてみました。


「Cafe Amazonはね、コーヒーが濃くて、甘くて、美味しいの。

あと、値段がスターバックスより安いんですよ!」


たしかに、Cafe Amazonのコーヒーはスターバックスのコーヒーよりコーヒー味が濃いです。そして、それは、カンボジアのローカルのコーヒーに近いものがあります。

カンボジアコーヒーは、油断して飲むと、後頭部を鈍器で殴られたようなショックを受けます。(慣れると美味しいのですが)

カンボジア人的には、こういうショッキングな味でないと、コーヒーを飲んだ感がないのかもしれません。

メインであるAmazon Coffeeの甘さも、スターバックスのラテに、ガムシロップを1パック全部入れたくらいの甘さがデフォルト。ちなみに、店員に「砂糖、もっと入れる?」って聞かれるのもデフォルトです。

そして、価格。

スターバックスのコーヒーは、前述のとおり3-4ドル。しかし、このCafe Amazonのコーヒーは1.5-2.5ドル(165-275円)


カンボジアローカルのコーヒー0.5-1ドル(55-110円)と比べると割高ですが、スターバックスみたいな内装や包装をこの値段で楽しめるのは大きな魅力なのです。


この2.5ドルというのは、カンボジアではひとつの基準で、食事に関しても2.5ドルを超えると高い、3ドルを超えるともう無理・・・と考えるカンボジア人は多いです。

価格表の半数が「もう無理…」であるスターバックスに対して、Cafe Amazonの価格設定は実に上手いものがあります。

ちなみに、量は、通常サイズがスターバックスのグランデ(大)サイズくらいあります。


サイズを選ぶことができず、強制的にこのサイズになるのですが、大きくて文句をいう人はあまりいないようです。

日本では昭和の吉野家が「美味いの、早いの、安いの」で売っていましたが、

Cafe Amazonは「甘いの、でかいの、安いの」です。「早いの」がないのが東南アジア的。

こういう細かい戦略をもった企業が、ワールドワイドのブランドと互角以上の戦いをしているのは、実に素晴らしいです。

このように、レベル1 屋台 0.5ドル、レベル2 ローカルカフェ 1ドル、レベル3 高級カフェ 3ドル だったところに、その間を埋めるAmazon Cafeのようなレベル2.5の高級カフェ 2ドルができることで、カンボジア人の庶民の選択肢が増えました。

そのレベル2.5のカフェで、カンボジア人がなにをしているかというと、自分のスマートフォンやタブレットで、FacebookやYoutubeをみているのです。

1ドルのカフェで街頭テレビから、2ドルのカフェでスマホでYoutube。

日本で50年以上かけて起こった進化が、たったの数年で起こる街、プノンペン。

新興国で生活するメリットは、このようなダイナミックな変化を、日々、肌で感じることができることです。

ちなみに、本日、サムライカレーの隣の通りに、Cafe Amazonの工事が始まりました。



約500mのこの通りに、13軒目のカフェ。

さすがに、できすぎです。



(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第24回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第25回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

第26回:「中華料理屋は世界のオアシスである。異論は認める」

第27回:「出張、サムライカレー!カンボジアのカレーを日本人に受けるようにカスタマイズしてみた!」

第28回:「カンボジアのカレーは福岡のサッカースタジアムで売れなかった! 顧客志向の大切さを改めて考える」

第29回:参入障壁の低さは過当競争を招く 激烈!カンボジアレストラン事情

第30回:東南アジアで食器を消毒する方法

第31回:あなたの訪れたインド料理屋の店員もネパール人かも

第32回:極私的 一番刺激的で、一番不味かった国、キューバ。

第33回:アジアの空港ラウンジに見る、「おもてなし」事情

第34回:ベトナム人に有名な日本人「ドレーモン」

第35回:年に3回お正月があるカンボジア。正月料理は、カレー?

第36回:極彩色が好きだけど、彩りは不要? カンボジア人の野菜の好み

第37回: 路上で豚の丸焼き、生バンドコンサート! カンボジアの結婚式は派手なんです!

第38回:カンボジアでも大人気? LINEのクマは神出鬼没

第39回:激烈! プノンペンコーヒー戦争!

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