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世界の食を訪ねて

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あなたの訪れたインド料理屋の店員もネパール人かも

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第31回]




世界中どこにでもある料理屋さん、極私的ランキング第1位は、先日の記事にも書きました通り、中華料理です。


中華料理屋は世界旅行のオアシスである。異論は認める


これに次ぐのがイタリアン、そして第3位がインド料理です。


インド料理と言えば、もちろんカレー。世界各地いろんなところにカレー屋があり、ナンやご飯と共に美味しく食することができます。



これらのインドカレー屋、どの国の人が経営していると思いますか?

まあ、普通考えるとインド人ですよね。しかし、私が東京、プノンペン、ホーチミンで無作為に10軒入ったインドカレー屋で店員およびオーナーの国籍を聞いたところ、衝撃の結果が返ってきました。


1位 ネパール 6軒

2位 パキスタン 3軒

3位 インド 1軒


ネパール人、強し!

10軒中6軒がネパールでした。


先日ふらっと立ち寄ったカレー屋も、タイとインドの国旗と共にもう一つ、普通の国旗とは違う、三角形を2つくっつけた形の旗が描いてありました。



実はこれがネパールの国旗です。


このお店もインドカレーが主体ですが、メニューのすみっこには「アジアンセット」という名前でひっそりと、ガパオセット(タイ)、トムヤムフォー(タイ+ベトナム)、ナシゴレン(インドネシア)、カレーライス(日本)なども混じっています。


店員に話を聞いてみると、やっぱりネパール人。オーナーもネパール人。

なんで、日本にはネパール人の店がこんなにあるのでしょう?


日本在住のネパール人は、2006年には7844人だったのですが、2016年には60689人と8倍近くに増えています。

※出典 法務省・在留外国人統計(旧登録外国人統計)


その大きな理由が、ネパールの国内に雇用がないこと。


ネパールは「アジア最貧国」の一つです。一日滞在しただけで、カンボジアと比べても生活水準に格段の違いのあることが分かるぐらいです。電気が不足しており、毎日のように計画停電があります。マオイストと呼ばれる共産党毛沢東派と国軍との内戦が1996年から10年間も続き、政治は混乱し、社会・経済は疲弊しました。それらの余波は、今も完全に収まってはいません。地理的な条件から、海外から工場を誘致したり、新しい産業を興したりするのも困難です。さらに、2015年4月には大地震が起き、9000人近くが犠牲になりました。


そんなわけで、国内では満足のいく職を見つけられず海外に出稼ぎをする人が多い。その中でも少なからぬ人々が、ビザの取りやすい「ネパール料理シェフ」という仕事で日本にやってきます。


また、日本への留学生も非常に増えており、その留学生がアルバイトでネパール人経営のレストランで働く事になります。


ちなみに、日本語教育機関で学んでいる外国人の人数は、2015年度時点で1位が中国人、2位がベトナム人、3位がネパール人です。ネパール人の学生数は6301人で、2011年度の約5倍ですから、ネパールの躍進ぶりがよく分かると思います。

※出典 日本語教育振興協会 平成27年度 日本語教育機関実態調査




インド人は、英語が堪能である人々が一定割合いて、英語圏の教育機関に進学することができます。インド国内にも、インド工科大学をはじめ世界的に有名な大学が多数あり、高等教育機関には困りません。


さらに、インド国内で経済成長が著しいため、海外に留学出来るレベルの教育を受けている人なら仕事はありますし、高い報酬を得ることもできます。


これに対してネパールは高等教育機関が限られている上に、お金を稼ぐところもない。従って行き先を選ぶ余裕もないので、「留学出来るところに留学する」という傾向があり、彼らが日本を含む世界中でレストランの店員になっているわけです。


こんな事情を知っていると、街を歩いていて、ネパール人らしき若者がレストランのチラシを配っていると、つい受け取ってそのお店に入ってしまいます。苦労して日本にやってきて、苦労してお金を稼ぎ、この先どうなるかも分からない。そんな彼らのカレー店に、カンボジアのカレー店オーナーとして、親近感と同情を禁じ得ないのです。


ちなみに、ネパールのレストランでは、カレーやナンももちろん出ますが、最もメジャーなネパール料理はモモと呼ばれる料理です。



餃子と小籠包の中間の様な食べ物で、醤油やチリソースなんかを付けて食べると美味しいです。


みなさんも、外国人がやっている料理屋に入ったら、ぜひ店員さんに話しかけてみてください。新しい発見がありますよ!



(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第24回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第25回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

第26回:「中華料理屋は世界のオアシスである。異論は認める」

第27回:「出張、サムライカレー!カンボジアのカレーを日本人に受けるようにカスタマイズしてみた!」

第28回:「カンボジアのカレーは福岡のサッカースタジアムで売れなかった! 顧客志向の大切さを改めて考える」

第29回:参入障壁の低さは過当競争を招く 激烈!カンボジアレストラン事情

第30回:東南アジアで食器を消毒する方法


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