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世界の食を訪ねて

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東南アジアで食器を消毒する方法

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第30回]


フィリピンの画期的なスプーン消毒法。東南アジアのお客さんが求めているのはこれなのです。


東南アジアのローカルレストランは、基本、壁に四方を囲まれてはいません。

こんな風に、半分外の状態にテーブルを置いて、外の空気を吸いながら食べるのが彼らの好み。



「エアコンがないから外の方が涼しいんでしょ」と思う方もいるかもしれませんが、エアコンが効く屋内の席と外の席の両方があっても、外の席から埋まっていくことが多いんです。


理由を聞いてみると「開放的な方がおいしく感じない?」とか言われるのですが、排気ガスや砂埃のあるところで食べるのがおいしいのかは、ちょっとわかりません。


でも、実際、日本にあるような普通のお店がつぶれた後、カンボジア人がその店を引き継ぎ、壁をぶち抜いて焼きそば屋にしたら大ヒット!なんてこともあるので、顧客のニーズはそこにあるのでしょう。


こんな風にオープンエアーで食べていると、ひとつ気になることがあります。衛生です。



そもそも、気温30度の屋外市場でこんな風に生肉が売っているようなところで、衛生もクソもない気がしますが、意外と現地の人は衛生状態を気にしたりしています。



香港では、「洗杯(サイプイ)」といってテーブルの上に乗っているお椀でお茶を飲むとき、必ず自分でお椀を洗うという習慣があります。


お店的にも、嫌がるどころか、普通に推奨していて、使ったお湯やお茶を捨てるボウルなんかも用意してあります。


東南アジアでも、出てきた食器は必ず自分で消毒しようとする人が多いです。

この場合、洗杯程ではないのですが、テーブルに設置されたナプキンや布で、一生懸命箸やスプーン、お椀や皿を拭くのです。

それまで、普通にテーブルの上で外気にさらされていたナプキンで、(少なくとも前の人のソースとかがついている状態ではない)皿を拭いたところで、どれほど衛生状態がよくなるのか疑問なのですが、みんな、食事が届くまでのあいだ一生懸命スプーンやお皿を拭いているのです。


そんな、セルフ消毒作業をイノベーションするすごいアイテムが、フィリピンにはありました。

それが、これです。



トーストマスターと書いてありますが、写真のメカの穴の部分には熱湯が入っています。英語で「熱いよ! 危険!」と書いてあるのですが、本当に熱湯で80℃くらいあるようです。そして、その熱湯にスプーンやフォークが入っており、熱湯消毒されているわけです。


このスプーンに触ると、当然ですが結構熱く、迷惑です。お湯から出せばすぐに冷めるのですが、日本だったら、厨房でこの状態にしておき、ウェーターが席に持ってくる頃には冷めているという使い方をすると思います。


しかし、ここは、東南アジア。

お客さん、店を全く信頼しておらず、自分の目の前で行われたことしか信じていません。

目の前で湯の中に沈んでいること、そして、触ってみて熱すぎるくらい熱いことが、「これは消毒されている」という、彼らの納得につながっているわけです。

結局、お客さんが本当に欲しいのは、消毒されているかというより、「安心」なんですよね。


このように、人間心理はなかなか複雑なわけですが、そんなスプーンを使って、今日もおいしく料理をいただきます。




写真・取材協力 主原弘道




(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第24回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第25回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

第26回:「中華料理屋は世界のオアシスである。異論は認める」

第27回:「出張、サムライカレー!カンボジアのカレーを日本人に受けるようにカスタマイズしてみた!」

第28回:「カンボジアのカレーは福岡のサッカースタジアムで売れなかった! 顧客志向の大切さを改めて考える」

第29回:参入障壁の低さは過当競争を招く 激烈!カンボジアレストラン事情

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