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カンボジアのカレーは福岡のサッカースタジアムで売れなかった! 顧客志向の大切さを改めて考える

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第28回]

カンボジアのカレーを日本人好みにアレンジ

前回、カンボジアのカレーを日本で売るために行った試行錯誤をご紹介しました。


ココナッツオイル味のカンボジアカレーに、カレールーを入れることによって日本風にし、カンボジア特産生胡椒をトッピングすることでカンボジア風にしてみました。


「でも、胡椒がカンボジアの名産ってだれもしらなくね?」


サムライカレーの鉄則、

「自分たちが出したいと思うモノではなく、お客さんが欲しがるモノを出すのだ」

からしてみると、カンボジアに慣れ親しんだ我々が「カンボジアっぽい」と思うものではなく、福岡のサッカーを見にきたお客さんが「カンボジアっぽい」と思うものを作らなくてはならないのです。なにか、ひと味加えなくては……。


「うーん……、カンボジア……カンボジア……カボチャ!?」



実は、みんな大好きハロウィーンでもおなじみカボチャの語源は、カンボジアなのです。


「かぼちゃは、天文年間(1532~55年)、ポルトガル人がカンボジアの産物として日本に伝えたことから、当初「カボチャ瓜」と呼ばれ、のちに「瓜」が落ちて「カボチャ」と呼ばれるようになった。 漢字の「南瓜」は南蛮渡来の瓜の意味で、中国でも「南瓜(ナングァ)」と呼ばれる」


(語源由来辞典より)


と、いうわけで、カボチャをトッピングすることでカンボジアらしさをアピールすることにしました。実際、カンボジアのカレーにカボチャがはいっていることもありますし。



もちろん、こういうことは言わなければ通じません。

マーケティングの4P(Product〈製品〉, Price〈価格〉, Place〈場所〉, Promotion〈売り方〉)、Promotionによ、りこのProductの魅力を伝えることが大切です。


と、いうわけで、早速お店にかける看板を作り始めます。


「カンボジアといって日本人が思いつくのは、アンコールワット。名前は安直にアンコールワットカレーでいいのではないか?」



胡椒が乗っかっていても食べ方が分からないので、アピールすると共に食べ方を紹介しよう



そして、カボチャの語源はカンボジアという豆知識で目を引こう



ついでに、カンボジアから来たばっかであることをアピールしよう



さあ、製品は整いました。

続いて、日本とカンボジアで調達するものを選択していきます。

日本での価格とカンボジアでの価格を調べて、カンボジアから持っていくものを決めていきます。


生ものは日本で買う必要があるわけですが、鍋やお玉などは日本で買った方が安かったりします。調理器具がIHなので、IH対応の鍋はカンボジアではすごく高いですし、お玉などは日本の100円ショップが一番安いからです。


逆に、カレーを入れる発泡スチロールの容器などは、カンボジアの方が安い。これは、保管や輸送にかかる費用がカンボジアの方が安いからでしょう。


必要なものを買いそろえ、試合前日に飛行機で福岡へ!

徹夜でカレーを作り、当日、スタジアムの売店で販売をさせていただきます!



さあ、カレーは売れたのか!?



販売目標 80食 → 結果 50食 という微妙な結果に。


反省点は

・サッカーを観戦しに来ている人は、別にカンボジアのカレーとか食べたいわけではない。むしろ食べ慣れた普通のカレーの方が需要があった。

・試合開始が2時のため、微妙にランチタイムとずれており、カレーの様な食事よりも、唐揚げの様なおつまみの方が需要が多かったのです。


出張! サムライカレー! 凱旋帰国! と盛り上がってしまったため、カンボジアのカレーを売ることだけに頭がいってしまい、現地のお客さんのニーズからずれてしまったという悪い例です。


買ってくれた人には、非常に好評だっただけに、残念です。例えば、カレーパンとかにしていれば……。



海外で失敗体験をしてみよう!というのが、我々サムライカレープロジェクトのコンセプトなのですが、国内でもやってしまいました。


「日本人である自分たちが提供したいと思うものを、カンボジア人が喜ぶとは限らない」ということは本連載でも何度もお伝えしていますが、「日本人が提供したいと思うものも、日本人が喜ぶとは限らない」わけです。


大切なことは、お客さんのことをちゃんと考え、お客さんが何を望んでいるのかを想像すること。学び多き出張サムライカレーでした。



(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第24回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第25回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

第26回:「中華料理屋は世界のオアシスである。異論は認める」

第27回:「出張、サムライカレー!カンボジアのカレーを日本人に受けるようにカスタマイズしてみた!」

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