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世界の食を訪ねて

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参入障壁の低さは過当競争を招く 激烈!カンボジアレストラン事情

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第29回]


カンボジア、プノンペンにて、ひっそりと営業中の我らがサムライカレー!


その2軒隣にレストランができました!


思いっきりローカルのレストランで、食べ物何でも1.5ドル(約150円)! 安い!

普通のおいしいカンボジア料理がでてきます。


ここに加えて、そのさらに2軒隣も工事中で、レストランができそうな雰囲気です。一体なぜこんなところにレストランができまくっているのか? その辺の事情を探ってみます。


2015年の1月に、サムライカレーから徒歩圏内にあるレストランの数を調査したところ30軒でした。これが、16年の1月には、なんと60軒。9月になると80軒にまで増えています。


街を歩いていても、あきらかに新しいお店が目立ちます。

サムライカレーの横にできたようなカンボジアローカルのお店も多いのですが、それ以上に外国人が作ったきれいでおしゃれな店が増えているのです。


こんなおしゃれなカフェや、


サブウェイ的な店。


シンガポール料理の店や、アメリカンなカフェ。


出されるハンバーガーも、かなり本格的でおいしいです。


そして、恐ろしいことにこのハンバーガーもお値段3.5ドルだったりします。

以前はこの辺の店も、いいハンバーガーは5ドルくらいはしたのですが、競争が価格をどんどん押し下げています。


スパゲティ4ドル。春巻きは2.5ドル。


以前の記事で、カンボジア庶民の普通のお食事は1~2ドル、豪華な食事が5ドルとお伝えしましたが、おしゃれカフェの値段も、だんだんその域に近づいてきました。


さて、なぜこんなに店が増えているのでしょう?

まず、ひとつの理由がカンボジアでの飲食店の作りやすさがあります。

家賃や物価が安いため、日本のように何千万円もかけなくてもお店を作ることができます。


さらに、外国人でも簡単に会社が作れる上に、比較的簡単に営業許可も取れるため、外国人がカンボジア人のパートナーを探す必要もなく、自由に飲食店を開くことができるのです。


このような理由で、プノンペン市内にはおびただしい数の外国人経営の飲食店ができており、スターバックスやクリスピー・クリーム・ドーナツといった世界的チェーン店、吉野家や丸亀製麺といった日本のチェーン店、その他、日本人を含む外国人が出している個人店など、中心地はレストランだらけです。


それゆえに、中心地では店舗に使える物件が埋まってきており、家賃が上昇をはじめました。じゃあ、他に行くところはないか?ということで、中心地から若干離れているけれども、外国人の住民は比較的多いサムライカレー周辺が、16年の出店ラッシュの場になっているのです。


ちなみに、増えているのはレストランだけではありません。

オーガニック野菜を扱うスーパーが、一本の通りに3店立て続けにできたり


クライミングジムができたり、



欧米人が好きそうなものが次々とできているのです。


さすがにできすぎで、個々のお店の集客は苦戦しているところが多く、商売をする方としてはかなり厳しいところです。

ただ、在住生活者としてみると、食べるところが増え、値段が安くなっているので非常に住み心地がよくなっています。


そして、お店で働くカンボジア人の数が増え、労働者の供給不足により彼らの賃金があがり、同時にお店の供給過剰によってレストランのメニューの値段が下がってくると、カンボジアの人たちがひんぱんにハンバーガーやスパゲティなどの「外国人向け」メニューを食べられるようになります。


ここまで来ると、「カンボジア料理しか食べないカンボジア人」という現状が大きく変わり、一気に市場が広がっていくでしょう。


プノンペンのレストランで働く人たちは、そうなる日が一日でも早く来ることを祈りながら、毎日せっせと料理を提供しているのです。



(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第24回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第25回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

第26回:「中華料理屋は世界のオアシスである。異論は認める」

第27回:「出張、サムライカレー!カンボジアのカレーを日本人に受けるようにカスタマイズしてみた!」

第28回:「カンボジアのカレーは福岡のサッカースタジアムで売れなかった! 顧客志向の大切さを改めて考える」

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