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世界の食を訪ねて

偉大なる食の約束の地 「築地移転」を欧州で考える

[第8回]マイケル・ブースの世界を食べる





旅人が恋に落ちる場所


築地のインフラが老朽化しているのも、新しい市場が物流上の課題を解決しうるというのもわかる(まさか、ベンゼンだのシアンだのによる土壌汚染や震災に起因する液状化、浸水の潜在的リスクに無自覚な愚鈍な人物が設計したはずはないだろうが)。しかし、実用性や効率性の論理を免れる何か、この土地ならではの歴史や特色、美しさも、確かに存在する。


何年か前、移転について市場の店主たちに取材したときは、だれ一人として賛同していなかった。老朽化を理由に取り壊しが決定してからの数年、移転に前向きな声は聞こえてこない。一方で、私が築地を勧めた外国人の友人たちは、行けばだれもがこの地と恋におちている。いかにとてつもない観光名所であるかを、忘れずにいようじゃないか。


どうせなら、新市場の問題が露呈した今こそ、移転そのものについて考え直せないものだろうか。たとえば、今の市場をそのまま残し、そもそもの責任者である東京都庁のオフィスを豊洲の真新しい施設内に構えるとか。


東京の胃袋が100年後も命をとりとめていたなら、東京都民も観光客も、みな手放しで喜んでいるはずだ。


(訳 GLOBE編集部 菴原みなと)




Michael Booth


英国・サセックス生まれ。食と旅が専門のジャーナリスト。著書に『英国一家、日本を食べる』(書籍、コミックとも亜紀書房)、『英国一家、フランスを食べる』(飛鳥新社)など。「北欧の人々はなぜ幸せなのか?」を追った『限りなく完璧に近い人々』(KADOKAWA)が9月末に発売。妻リスン、息子アスガーとエミルと共にデンマーク在住。


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