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世界の食を訪ねて

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偉大なる食の約束の地 「築地移転」を欧州で考える

[第8回]マイケル・ブースの世界を食べる



市場は眠らない。
photo: Semba Satoru

日本の台所、築地市場の移転問題はいまだ解決の糸口が見えない。

長年の市場ファンの筆者は「今こそ再考の時」だと言う。

失って初めて気づく、なくしたものの大切さ。



エッフェル塔は本来、建設から20年で取り壊されるはずだったことをご存じだろうか。現代フランスの象徴が命拾いできたのは、電波塔としての役割もあったからだ。悲しいことに、当時の中央市場「レ・アール」はそれほど幸運ではなかった。19世紀中頃に鉄骨とガラスで築き上げられた優美な宮殿。画家のエミール・ゾラが「パリの胃袋」と称したそれは、1971年に跡形もなく壊されてしまった。


その市場跡地の現在を想像してみてほしい。取って代わったのはあまねく忌み嫌われる、哀れなショッピングモールだったのだ。


私の話がどこへ向かおうとしているのか、もうおわかりだろう。東京の新しい知事、ユリコ・コイケがもたらした「久々の朗報」、築地市場移転の延期についてである。



唯一にして最大の、食の「約束の地」が取り壊されると知ったとき、心に浮かんできた曲がある。

−−−−

Don't it always seem to go

That you don't know what you've got(手にしてきたものの大切さなんていつだって気づかないものよ)

Till it's gone(失ってしまうまではね)

They paved paradise(楽園は舗装され)

And put up a parking lot(駐車場になった)

(ジョニ・ミッチェル 「ビッグ・イエロー・タクシー」)

−−−−


この地球上で「築地」ほど、私が愛してやまない場所はない。東京に来ると必ず、露店から露店を2、3時間、ぶらぶらと歩いては、海の仲間たちの壮観な隊列と、仲買人たちのただものでない手さばきに驚かされる。その場に自分が居合わせているということ自体にも。下手に動いて場を乱したくないから、朝9時より前に行ったためしはない。東京中のシェフが仕入れに殺到するのも、かの有名なマグロの競りも(なぜ外国人は、3時に起きてまで、あれをひと目見んとはりきるのだろうか。長靴姿の男衆たちが、凍った魚に向かって叫ぶさまを?)、主要ビジネスのほとんどは、もっぱら早朝に起こっている。あのにおいさえも、私は好きだ。夏の盛りでも決して生臭くなく、清潔で新鮮。築地はいつも潮の香りだ。


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