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世界の食を訪ねて

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中華料理屋は世界旅行のオアシスである。異論は認める。

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第26回]



中華料理のテッパン!フライドライス


私は(こんな連載を書いているにもかかわらず)食べ物に無頓着で、だいたい何を食べても生きていけます。1年間世界一周旅行をしていたときも、適当にローカルの料理を食べながら生活していました。


ただ、やはり、生まれ育ったのは日本であり、日本食へのこだわりがどこかに刻み込まれているのでしょう。1カ月に1度くらい、強烈に日本食が食べたくなることがあります。



日本食は思った以上に世界中に広まっており、東南アジアの場合、それなりの規模の都市に行けばだいたい日本料理屋があります。アメリカや西欧諸国もまたしかり。旅をしているなかで、あまり日本食に困ることはありません。


しかし、南米や東欧になると話は変わってきます。

ちゃんとした日本料理屋があるのは、だいたい首都。それ以外の所には、その気配すらありません。


ボリビアの首都・ラパス(ここにはおいしいカレー屋や数軒の日本料理屋がある)から、ウユニ塩湖に行き、そこから砂漠を越えてチリへ向かうなんてことをすると、チリの首都サンティアゴまでの結構長い間、日本食がない期間が続きます。


そんなときに、「日本食が食べたい!」の発作がきたら、頼りになるのが中華料理屋なのです。


とにかく、世界中どこに行ってもあるのが中華料理。

南米の田舎町にも、キューバにも、「世界のこんなところに中華料理」的な感じで、町中に、平気な顔して小さな中華料理屋があるのです。


しかも、助かるのが、どこに行っても、安定してうまいのです。

旅先で中華料理があるとホッとしますね


メキシコの明らかに日本人ではない店主がやっている日本料理屋で「トンカツにコーラがかかっているカツ丼」を出されたことがありますが、中華料理ではあまりいやな思い出はありません。しいていえば、クロアチアのバスターミナル内の料理屋でスパゲティーにしょうゆをかけて炒めた焼きそばが出てきたときくらいでしょうか(しかし、これが結構おいしかった)


さらに、安全第一でいくには、チャーハン(フライドライス)を頼んでおけば、まず間違いはありません。


お米の国の人なので、塩味のお米を食べるだけで、日本食食べたい病の発作はほぼ治まります。


さらに、シューマイや餃子があれば、パーフェクト。



ご飯にしょうゆと、それをいかす何かがあれば、他になにがいるというのでしょうか?


しかし、これほどまでに世界中に中華料理屋があるのはなぜなのでしょう?

それは「華僑」の存在がキーポイントです。


華僑とは、広辞苑によれば、「中国本土から海外に移住した中国人及びその子孫。東南アジアを中心に、全世界に散在する」人たちです。


中国人は、国よりも家族を信頼する人が多く、家族を世界各地に送り込む傾向があるようです。たとえば、香港在住の事業家に子どもが3人いたとすると、1人はアメリカの大学に留学させ、1人は南米の親戚の所に預ける、1人は中国本土で事業をやらせる、といった形で、家族を分散し、どこかの国がヤバイ状況になったときも、他の国に行った家族を頼れるようにリスクを分散しておくのです。


そして、さまざまな国に渡った華僑が、一番最初に始めるのが中華料理屋です。まずは、そこに住んでいる中国人相手に、そして、ちょっとずつ現地の人にもその中華料理を食べてもらうようにして日銭を稼ぐ。


そうして稼いだお金を元手に、本格的に事業を展開していくのです。


私が住んでいるカンボジアにも、中華料理屋はたくさんあります。

カンボジア人の子たちに「カンボジア料理以外でどこの国の料理を一番食べる?」と聞くと、返ってくる答えはだいたい中華料理です。そして、その理由は安くておいしいから。


確かに、カンボジアにはきれいではないけど、おいしくて安い、小さな中華料理屋がたくさんあります。

カンボジアでもおいしくいただいてます

小籠包も、ギョーザも、ラーメンも、1食2ドルというカンボジア料理と大差ない値段で、しっかりおいしく食べられるのです。



そして、中華料理で稼いだ資本かどうかは分かりませんが、今、カンボジアの巨大なコンドミニアムやオフィスビルのほとんどが中国資本で作られています。


これは、カンボジアに限らず、東南アジアどこにでも見られる現象です。

さらにいうと、東南アジアの政界、財界の重要なポジションに、多くの「華僑」が入り込んでいます。

世界中に移住し、その土地に食から入っていき、どんどん根を張って、経済的にも政治的にも成功していく華僑。


そのたくましさに驚かされることばかりですが、現地の食材でこれだけおいしい中華料理を安く作れるその才能があれば、さもありなん、と納得してしまうのです。


(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

第22回:「ご飯の国の人だから。おにぎりを買ってくれないカンボジア人」

第23回:「500円の食事は月に1度のごちそう!カンボジアの「ランチ相場」

第25回:「意外にエコ?フィリピン驚きの皿洗い事情」

第26回:「ウニは貧乏人の食べ物!? 世界じゃこれは、ゲテモノ料理!?」

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